ヒロアカsong


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轟くんと雫ちゃんの様子に不安になっていると、ジリリリリリリという音と共にアナウンスが鳴り響く

『ヴィランによる大規模破壊が発生!
規模は○○市全域、建物倒壊により傷病者多数!
道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着する迄の救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う
1人でも多くの命を救い出すこと!!』

スタート

羽を使い上空から街の状況を確認する
どこも瓦礫が積み重なっておりとてもじゃないが安全なところはない

「(ならここだ)」

降り立ったのは先ほどまで控室だったところ
ここしか安全なところはない

近くにいた人たちを呼び集める

「ここを救護所にします!この中に治療系の個性の方はいますか?」

「それなら私が」

「私も怪我の状態を見極めれるよ」

「なら運ばれて来た人のふるい分けお願いします!
重病の方はあちら側、比較的軽症な方はそちら側にて応急処置しましょう」

お父さんが病院関係者であるため救護所を建てること、落ち着いてふるい分けを行えるように事前準備を行うことの大切さは知っていた、故にそう行動する

きっとA組面々は知らないだろう
私は戦闘好きというイメージが先行しているため見落とされがちだが音波を使える

次々と運ばれてくる要救助者

「(この試験が何分あるか分からない、けれど)」

やるしかない、だって私はあの時助けてくれたオールマイトのようになるって決めたんだから
ラッパを取り出し一次同様に吹く
けれど今回は攻撃技じゃない、行うのは超音波治療

救護所を覆うように展開した音波の雨はゆっくりと断続的に降り注ぐ
おそらく継続して5分は持つであろうそれにより人々の痛みが多少は軽減されるはずだ

「大丈夫です、リラックスしてくださいね」

これが私の生み出した必殺技、"ヒーリングエコー"
対象が単体なら直接超音波をあてることもできるけれどこうも複数ならば拡散できるこのラッパを使用した方が良い

と、その時救護所の傍の壁が弾け飛んだ
姿を現したのはギャングオルカとそのサイドキック達

『ヴィランが姿を現し追撃を開始
現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ救助を続行してください』

「っー!?」

やられた、わざと救護所付近に現れたのは避難をさせるための時間稼ぎだろう

「唄ちゃん!避難を!!」

出久のその声に頷く

「皆さんできるだけ奥に移動しましょう!動ける方はこちらへ
それ以外の方も1人1人一緒に避難しますので安心してください」

できるだけ笑顔でゆっくりと話す
緊張や不安は伝わる
だからこそいつも以上に意識した

軽症者の避難が完了し、その場を駆けつけた三奈ちゃんや尾白くんに預け、重傷者の移動を手伝う
怪我をしている人を動かすのだから痛みを軽減させるためにもう一度ラッパを吹いて超音波治療を展開した

「(これで今日3回目の音波、大丈夫まだできる)」

合宿でやったトレーニングが効いている
見たところギャングオルカの方は轟くんが向かったようだ
あと何分かわからない、けれどまだ数回は"ヒーリングエコー"を撃てる

「(絶対合格するんだ!!!)」

元いた救護所からの避難が完了
三奈ちゃん達にはヴィラン制圧の加勢に行ってもらった

「ごめんね舞羽さん、あなたも行きたいでしょう」

傍にいた受験生がコソッと耳打ちしてくる
けれど首を横に振った

「いいえ、私が出る幕はないですから」

A組のみんなを信じてる
わざわざこの場を離れる必要はない

そう思った時、ブザーが鳴り響いた

『えー只今をもちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました
まことに勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程終了となります!!
集計の後この場で合否の発表を行います、怪我をされた方は医務室へ…他の方々は着替えてしばし待機でお願いします』

そのアナウンスを聞いて体の力が抜けるのを感じた
近くにいた受験生の方と握手をしてから更衣室に向かい着替える

しばらく待った後、目良さんがモニター前に立った

『皆さん長いことお疲れ様でした、これより結果発表を行いますが…その前に一言
採点方式についてです、我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました
つまり…危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています
とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています、今の言葉を踏まえた上でご確認下さい』

一斉に表示された名前

「(ま…ま…)」

舞羽唄
その名前が確かに表示されていることに頬が緩む

「あったー!!!」

近くにいたお茶子ちゃんと抱き合う

「ねえ!!」

その声に振り向けば、勝己の顔が険しい
え、嘘、落ちたの?あの勝己が?
もしかして救助面で減点をくらったんだろうかと想像して何とも言えなくなる

「ごめん!!」

大きすぎるその声は夜嵐くんのもの
そちらを見れば轟くんに頭を下げている
またもや地面についているけれど大丈夫だろうか

「あんたが合格逃したのは俺のせいだ!俺の心の狭さの!ごめん!!」

それを聞いて驚いた
轟くんも落ちているとは思わなかったのだ

『えー全員ご確認いただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします
採点内容が詳しく記載されてますのでしっかり目を通しておいてください』

渡された紙には100の文字
二度見した私を不審に思った響香ちゃんが覗いて来たけれどギョッとして「待って100点?!」と叫んだので勝己がギロッとこちらを睨みつけて来た
即目を逸らしたけれどこれ後で何かされるんじゃないだろうか

『ボーダーラインは50点、減点方式で採点しております
どの行動が何点引かれたか等、下記にズラーっと並んでます
合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できる立場となります
すなわちヴィランとの戦闘、事件事故からの救助など…ヒーローの指示がなくとも君たちの判断だけで動けるようになります
しかしそれは君たちの行動1つ1つにより大きな社会的責任が生じるという事でもあります
皆さんご存知の通りオールマイトという偉大なヒーローが力尽きました、彼の存在は犯罪の抑制になるほど大きなものでした
心のブレーキが消え去り増長する者はこれから必ず現れる、均衡が崩れ世の中が大きく変化していく中いずれ皆さん若者が社会の中心となっていきます
次は皆さんがヒーローとして規範となり抑制できるような存在とならねばなりません
今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格免許、半人前程度に考え各々の学者で更なる精進に励んでいただきたい!』

そうだ、あくまで仮
私たちが学ぶ事はまだまだたくさんある

『そして…えー、不合格となってしまった方々
点数が満たなかったからとしょげてる暇はありません、君たちにもまだチャンスは残っています
3ヶ月の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば君たちにも仮免許を発行するつもりです
今私が述べた"これから"に対応するにはより"質の高い"ヒーローがなるべく"多く"欲しい
一次はいわゆる"落とす試験"でしたが選んだ100名はなるべく育てていきたいのです
そういうわけで全員を最後まで見ました、結果決して見込みがないわけではなくむしろ至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者になる者ばかりです
学業との並行でかなり忙しくなるとは思います、次回4月の試験で再挑戦しても構いませんが』

それを聞いて勝己も轟くんも挑むことにしたらしい
救済措置があって本当によかった

その後発行された仮免許を見てにまにましていると雫ちゃんが「羽動いてるよ」とクスクス笑うので慌てる
この癖は全然直る気配がない

すると向こうから夜嵐くんが走って来た

「轟!また講習で会うな!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとくごめん!!」

「こっちも善処する」

轟くんに言いたいことを言った夜嵐くんがこちらを向いた
正式には隣にいる雫ちゃんを

「雫さん!好きです!!」

「ごめんなさい!」

「仮免が取れたらまたリベンジさせて下さい!」

「「「「(話聞いてない…)」」」」

言いたい事を言って走っていってしまった夜嵐くん
おそるおそる轟くんを見ると表情は浮かないものの怒っている様子はない

「(雫ちゃんと仲直りできるといいんだけど…)」











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