ヒロアカsong


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2月下旬に差し掛かる頃

空港へ来ていた私と雫ちゃん
それに出久、勝己、轟くんというインターンメンバー

「到着は現地時間の昼頃だって、そのまま作戦に参加して翌日には発つから弾丸だね」

雫ちゃんの言う通り、所謂ちょっとした海外出張のようなものに行くことになった私たち
やるべきことが終われば帰ってくるだけのシンプルなものなので観光なんかをする余裕はない

「ふわぁー…眠…飛行機何時間乗るんだろう、15時間くらい?」

今回向かうオセオンといえば大西洋に面する国
1つの島国をクレイド国と半分こしている国だ
行ったことのない国なので楽しみだと思いつつ欠伸をする

「唄ちゃん何でそんなに平気そうなの?」

明らかに緊張している出久にそう問われ首を傾げた

「出久もしかして海外初めて?」

お母さんが海外好きなので結構色々連れて行ってもらったおかげで私からすれば特段珍しくはない

「I・アイランドをカウントしていいなら2回目」

「あれは特殊だからね」

移動都市であるI・アイランドは別としてどうやら今回が初の海外なんだろう
ずっと人という文字を掌に書いている

「海外だぁ…緊張するなぁ…」

「英語ができればなんとかなるよ」

出久を励ますように雫ちゃんがそう告げれば、轟くんも頷いた

「あと、掌の人の字は書いたら飲まねえと適切な効果が得られねえぞ」

「ありがとう轟くん」

いたって真剣な顔で謎のアドバイスをする轟くんに呆れた目を向ける
雫ちゃんも苦笑いしてるし、天然というよりは世間知らずな気がしてきた

すると離れた席に座っていた勝己の方から爆発音が聞こえたのでそちらを見ると、彼もまた人という文字を書いて飲み込んでいる

「え…かっちゃんも緊張とかするの!?」

「英語ができりゃなんとかなる」

「だーってろボンヤリクソ男共が!!海外任務だぞ!日本とは何もかも違ンだ!!
少しでも普段のパフォーマンス出せるよう集中しとんだわ!!!」

出久と轟くんに食ってかかる勝己を見て雫ちゃんがフッと笑った

「意外とそういうところあるんだね」

「ああ?!」

相変わらず仲の悪い2人にどうしたものかと思っていると、隣に誰かがやってきた

「まあ、緊張にも色々あるからね、ナーバスか高揚かで言えば、爆豪くんは後者では?」

その声にバッ!と勢いよく横を見れば、おしゃれな服に身を包んでるホークス
うわ、私服かっこいい…!!

「そして天使ちゃん、キミもね」

パチっとウインクしたホークスにテンションが上がっていく
両頬を押さえ「ホークス!」と告げれば、にこりと微笑まれた
キャーキャー言ってる私を他所に出久と轟くん、雫ちゃんが近づいてくる
ホークスの傍にはインターン中の常闇くんもいる

「常闇くん!」

「常闇のとこの派遣先は…」

「アメリカだ、あちらは国土が広いからな
ホークスの速さが武器になる」

「流石速すぎる男!ホークス!!」

出久の大きな声に周囲の人がざわついた
「え、ホークス?」「ホークス!?」と視線が集まり、一斉に駆けてきた

「ヘイヘイ、ストップ雛鳥ちゃん
ここは空港だよ、騒いじゃダメだぜ?」

決め顔でそう告げたホークスはファンたちに連れ去られた
常闇くんも一緒に連れて行かれてしまったようだ
せっかくホークスと話せるチャンスだったのに…と、恨めし気に出久を見れば「ご、ごめん…」と謝られる

「軟弱な」

「エンデヴァー!」

またまた空港内に響く出久の声
けれどホークスの時と異なり、エンデヴァーだと気づいた周りの人も寄ってくることはない

「人気ないんだね」

「顔怖いからね」

ひそひそと雫ちゃんとエンデヴァーの背中を見ながら話すとギロッとこちらを振り返ったので慌てて目を逸らした

「そろそろ搭乗だ行くぞ」

そう告げチケットを渡される
座席を確認すれば、3列シートが前後で3セット取られていた

前の席が窓側から順に出久、勝己
真ん中の席が轟くん、エンデヴァー
後ろの席が私、雫ちゃんだ
通路側にはサイドキックの人が乗るのかもしれない

そう思っていると轟くんがエンデヴァーに低い声で告げた

「何でお前の隣の席なんだ、笑えねェ冗談か?緑谷と爆豪の隣にしろ!」

「と、轟くん…!!」

「うわ、始まった」

「焦凍くん…」

いつもの光景に遠い目をする私たち
これは一波乱あるぞと思ってたところに勝己が乱入する

「テメェ…まだ俺を友達だと思ってンな…?!」

けれど勝己を無視してツカツカとエンデヴァーに歩み寄った轟くん

「座席を変えろ…友達の隣がいいつってんだろ!!」

「友達じゃねンだよ!!尾翼に括り付けて快適な空の旅楽しませたろかァ!!!」

末っ子っぽいところが全面に出てる轟くんとそんな彼に突っかかる勝己
周りの人も何事かとこちらを見てるので他人のフリをした

「「(一緒にされたくない)」」

恥ずかしい通り越して迷惑だって気がついてない3人
日本のNo.1とそこで学ぶヒーローの卵がいい迷惑だ
出久も完全に傍観決め込んでいて面白い

「チケットを渡せ!」

「だっ!ダメだ!!」

「つかテメェ無視してんじゃねェぞ!」

歩み寄ってきた勝己に目を向けた轟くんが真面目な顔でチケットを差し出す

「爆豪、チケット交換してくれ」

「気やすいんだよテメェ!!」

「コラァ!!焦凍に何をする!!!」

轟くんのネクタイを掴んだ勝己、そんな勝己を叱るエンデヴァー、エンデヴァーを睨む轟くん
まさに地獄絵図な光景を眺めていると、出久を含めた4人のチケットが赤い羽によって回収された
その羽は先ほど消えたはずのホークスのもので、どうやらファンを撒いて戻って来たらしい

「座席はこの並びで、全く…小学生じゃないんですから」

チケットを4人に渡したホークス
その並びを見てみると、前の席に勝己、エンデヴァー、真ん中の席に出久、轟くんというもの

「俺らそろそろフライト時間なんで先行きますねー
皆さん、リラックスしてワールドヒーローズミッションに備えましょう」

ホークスの言葉に私たち5人は頷いた




初の海外任務、異国の地でのヒーロー活動
ヒーロー公安委員会はヨーロッパの小国、オセオンからの応援要請を請けエンデヴァー事務所の派遣を決定
そこでインターンをしていた私たちはエンデヴァーに同行を許されオセオンへと旅立つことになった








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