ヒロアカsong


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第4セット開始前

初期位置についた私たちに勝己は言った

「いいかオラ三下、とりあえず俺についてこい!
俺が先頭で上を進む!てめぇらは俺をサポートできるようにしとけ、耳と唄は常に音で雑魚どもの位置探っとけ」

相変わらずの暴君ぶりに大丈夫か心配になってしまう

「え、攻めるん?向こうめっちゃ迎撃性能高いの揃ってんじゃん
せっかく耳郎と舞羽いるんだし隙窺お隙、慎重に」

そう告げた瀬呂くんに首を横に振った

「違うよ、だから先手取らないと」

「え?」

「隙は窺うもんじゃねえ、動いてつくるんだ
姿が見えりゃこっちのもんだ、いいな!」

そう告げた勝己に不安そうにみんなは顔を見合わせる
どうしたものかと見守っているとため息をついた勝己はゴソゴソと何かを取り出した

「一応持っとけ、威力はねェが使える」

ぽいっと投げたのは手榴弾
それをわたわたと受け取る3人

「あれ、私のは?」

「お前暴発させっから無しだ」

「え、信用皆無」

マジかとショックを受けている間に第4セットがスタートしてしまう

「それとだ、てめェらが危ねェ時は俺が助ける…で、俺が危ねェ時はてめェらが俺を助けろ」

その言葉に正直驚いた
勝己が誰かに助けを依頼するなんて聞き間違いだろうか

「ちょ!なにソレ!マジで言ってんの!?」

「嘘だろそんな策が!?」

「だーってろ」

すぐに飛び出した勝己
慌てて4人で追いかける

『さて第4セット!A、B共に1勝1分け
現在両者互角のように思えるがぁあ!?
しかしA組の1勝はほぼ心操のおかげ!はたして互角と呼べるのか!?』

ブラド先生の偏向実況を聞き流しながら音を探る

「遅ェーンだよのろまが!!!」

「ウチ音聞きながらなんだけど!!」

「そーだそーだ!!」

「いいからついてこいや!!」

一瞬でもマイルドになったのかと思ったけど前言撤回だ
勝己が叫ぶせいで索敵が全然捗らない

「相変わらず"ついてこい"だな」

「体育祭の時から変わんねえや」

「なんだかんだ協力してくれるけど、でも…本当に大丈夫かな」

心配そうな一同に私もパルクールを使用しひょいひょいとパイプやらを飛び移っていく
羽はいざという時まで使用しない
それに視界が悪い中飛ぶのは避けたい

「止まれ!いる!!耳!唄!全員近くにいるハズだ探れ!!」

「名前!!」

勝己の指示通りすぐに索敵を開始する
けれど聞こえるのは無数の音

「早よしろや!!」

「待って…」

「やられた!!」

叫んだ直後

「ハイ、しゅーりょー」

勝己の周りを取蔭さんの個性で切り分けたバラバラの全身が襲う
索敵を逆手にとられた
音の跳ね返りをいたるところで発生させてくれたおかげで全然気がつけなかった

「爆豪こっちへ!」

すぐにテープを張り巡らせて攻撃を防ぐ瀬呂くん
けれどそれすら取蔭さんの思惑だったらしい

「ハイ、しゅーりょー」

テープ目掛け放たれたのは凡戸くんの個性の接着剤

「やっべ!ハメられた!」

テープ達が仇となって接着剤が行手を塞ぐ

「こっちへ!」

「ヒャッヒャッヒャ襲い襲い」

接近に合わせて音を鳴らすことで待ち伏せを気づかせない
ボンドでベタベタのパイプとテープは触れば取れない

「(くっそ、読まれてる)」

すると鎌切くんが切断した接着材まみれのパイプが落下してきた

「下がって!!」

3人を守るために羽を広げる
全部跳ね飛ばしてやる

そう思って羽を撃とうとしたけれど、目の前のパイプや接着剤もろとも勝己が爆破で吹き飛ばす
取蔭さんの個性に翻弄されながらもこっちを守ってくれた勝己

「(そうだ、助けるんだ)」

遮蔽物がなくなったことで飛び出してきた鎌切くんと豹牙さん

「まず面倒な耳郎と」

「舞羽!!」

襲いくる鎌切くんから響香ちゃんを守るために割って入ったのは勝己
響香ちゃんの背を蹴り鎌切くんから距離を取らせてすかさず彼を爆破した

私もそれに合わせ宙に浮いたまま音波の個性のスイッチを入れる

「(もう人に撃つのも怖くない)」

勝己の爆風に飛ばされないように勝己の肩を掴んで豹牙さん目掛け思いっきり音波の個性を放った

「ぐっ!!」

苦しそうな声を出した豹牙さんはすぐにジャンプし距離を取った
個性は雪豹、確か山岳地帯に住む雪豹はジャンプ力が凄かった気がする
きっとこういう入り組んだところもお手の物なんだろう

「っ、切奈ァ!!!」

「何してンだァ!?」

「防いだかよ!虫は反射が速えーなァ!?」

追撃と言わんばかりに鎌切くんを再度爆破する勝己
けれど向こうは勝己とは正面でやりあわない作戦なんだろう、2人は退いていく

「ありがと」

「うるせェ逃げたぞ探せ!!授業だろーが何だろーが関係ねェーんだよ
決めてンだよ俺ァ!勝負は必ず完全勝利!5-0無傷!これが本当に強ぇ奴の勝利だろ!!」

根本的な部分は何ら変わってない
けれど出久とのぶつかり合いを経て確かに何かが変わった

「いいね、分かりやすい」

すぐに索敵を開始、無数の音が頭に入ってくる

「うるっさ…全体的に遠ざかってる!」

「邪魔されて捉えづらいけど…でも数減ってる!集中すれば聞き分けられそ!」

「減ってんの?」

私と響香ちゃんの言葉に瀬呂くんが不思議そうな声を出した

きっとB組は再び距離を取って待ち伏せするつもりだ
同じ戦法を繰り返してミスを誘発するつもりだろう

「仕切り直す気か…クソが!なめやがって…行くぞ!!」

飛び出した勝己
が、進路上に音もなく現れたのは泡瀬くん

「竣工!!!」

一瞬で勝己は壁に溶接されてしまう

「把握されすぎー!!」

「ほんとそれ!」

瀬呂くんのテープと私の羽が泡瀬くんへ向かうけれど彼はそれを避ける
くっそ、地形的にごちゃついてるせいで当てづらい

「なめんな!」

自力で脱出しようとした勝己だけれど、砂糖くんがその溶接された部分を籠手もろとも破壊した

「行け!!」

「くっつけてんじゃねェぞゴラァ!!」

すぐに勝己が泡瀬くんを追いかける

泡瀬くんもすぐに迎撃態勢に入って再び溶接しようと試みた
けれど勝己は今度は真上に飛び、泡瀬くんを避ける

「任せるぞ」

飛び上がった勝己
泡瀬くんの目に映ったのは瀬呂くんに抱えられた響香ちゃん

「任」

「された!」

響香ちゃんの個性が炸裂
これで泡瀬くんが戦闘不能になった

「勝己!」

直ぐに凡戸くんの位置を特定し羽を飛ばす
その羽を追って勝己が飛んでいった
慌てて接着剤を撒いた凡戸くんだけど、勝己は相変わらずの器用さで爆破を繰り返して全て避ける

「冬は調子がクソでよォ…やっとあったまってきた」

背後から爆破された凡戸くんを砂糖くんがすかさず羽交い締めにした

「確保だーーー!!」

『なんという迅速な連携!!一瞬で俺の可愛い2人を確保!!』

ブラドキング先生が嘆いても仕方ない
今までの戦いが何だったんだと思えるくらいにスムーズすぎる戦いだもん
おのずと口角は上がってしまう









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