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[3]

「これは……っ」

 ホークの体が震える。
 ジャックの視線を辿って、痕が付いているだろう其処を隠した。隠したところで体中に痕があるし、見つかってしまったのだから隠す意味がなかったが隠さずにはいられなかった。

「俺の知らない連中に、色んなところに痕を付けられて」

 ホークはふるふると首を横に振る。ジャックの言う通りだったが認めたくない想いがそうさせていた。何も違わないだろうとジャックはホークを逃がさない。体を囲い、檻の中に閉じ込めるようにして責めた。

 ホークは何も悪くはない。
 そんなことは分かっていても。

「許せないよなぁ……。俺だってキスマーク、付けたことないんだぜ?」

「やめ……」

「キスの先だって」

「ぃ……や、ゃだ……」

「どうしてなんだ?ホーク」


 どうして俺じゃないんだよ!
 ジャックは叫ぶのを堪えて、ホークを押し倒した。

 愛し合えると思っていたのに。キスマークなんて見せつけられてしまったら、嫌でも現実と向き合わなければならなくなるじゃないか。

 やっぱり。そうだよな。
 ホークはどこへも行けないように閉じ込めておかないと。
 監視しておかないとダメだ。
 これが俺なりの愛の形だから。

 ジャックは一つ納得をして、強張りかけた表情を緩めた。

「……いやだ……っ」

「ん、ホークごめんなぁ。怖がらせちまって。もう大丈夫だから……大丈夫」

「ひ、ひ、……っ!」

 ホークの呼吸が乱れる。双眸は見開かれて涙の膜が揺らめいていた。

 怖がらなくてもいいんだ、ホーク。
 これからはいつも俺がそばにいるから。
 心の中で語りかけて、ホークの頭をいい子いい子するように撫でた。

 罪悪感とされたことの恐怖でまたパニックを起こしかけたホークは、頭を撫でられたくらいでは落ち着かなかった。

「お、お、こって、ないってッ
言った、じゃない、か」

 酸素を求めてはくはくと開く口からはジャックを責めるような言葉が飛び出す。どこかで許されると……いや、許されたいと思っていたのか。

「怒ってないって」

「うそだ……嘘……おれ、
騙されなぃ……っ」

「……。
怒ってないけど……。俺を怒らせたいの?」

 ホークはどきりとして首を横に振る。

「ホークさ、俺に何回嫌だって言った?」

 耳元でジャックの低い声が言う。ホークはもう首を振ることしかできなかった。ジャックの眉が微かに歪み不機嫌な顔になっている。今、ホークからは顔色が分からない体勢でいるためか、苛立ちを隠さなかった。

 嫌々をする素振りは、時と場合によっては胸を深く抉ることもある。傷付いているのは何もホークだけではないのだと言えるものなら……。

「……っ」

 ホークの耳に噛み付いて、驚いてシーツに縋り付く彼の手を捕らえて指を絡めとる。

「嫌だは、もうナシ。
俺、悲しくなっちゃうから」

「ぅ、ぅ……」

「な?」


 いい子だから。もう拒まないでくれ。




2022,6,6
..つづく
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