茶会


彼女は言っていた
君の紅茶は苦過ぎる
甘くないミルクティーを私は好まない
(毛を逆立てた猫も同じく)

僕も君の茶番じみた喜劇(君は悲劇だと言い張っていたっけ)が正直好きではない
ねぇ だって あまりにも
(コンクリート壁の落書きみたいだ)
(勿論下手な方ね)


「ねぇ」
「何」
「何でもない」
の応酬を幾度か繰り返した後
互いに目の前の紅茶と菓子に集中する

秒針だけが微かに鳴り響く中、君が持参したパサついたクッキーで奪われた水分を渋めに淹れた紅茶で潤した

「ねぇ」
「何」
「何でもない」
「あっそう」
「…あのさ」
「今度は何」
「……何でもない!」

もう帰るわ!
彼女は立ち上がり荷物を纏め足音を踏み鳴らしながら部屋から出ると、二度と来てやるものかと言わんばかりに思いきり扉を閉めた
ティーカップは空だった


でもまたきっと君は此処に来て僕は渋めの紅茶を淹れる
ノンシュガーのミルクティーを
苦いと口こぼしながら据え置いた角砂糖は加えずに飲み干すのだろう
そして僕も君の喜劇(正確には悲劇)をよくできた御伽噺だと心の内で笑いながら適当に頷き紅茶を啜るのだ


(たまには甘いミルクティーを淹れてやっても良いかな)

(勿論冗談だけれど)






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