「せんぱい」
歌うような彼の表情はうっとりとしていて、いつもとはまるで別人だった。
「ねえ、橘先輩。えっちなことしましょう?」
眼前にある整った顔が、とろかすような笑みを形づくる。見たことのない目をした彼が、そこにいた。
暦も11月になれば秋の深まりも底が見え、近づく冬の足音に嫌でも気づいてしまう。例年なら「もう少しで年末か、慌ただしくなるなあ」程度の感慨だが、今年は特別だ。なにせ個人的な、しかし大きな変化があったのだから。
秋は恋人――入谷紫音と気持ちが通じ合った季節だ。そんな二度とない季節を、もう少しだけ味わっていたい。……なんて柄にもない感傷的なことを考えてしまうのは、ずっと入谷のそばにいる影響なのだろうか。
ちらりと横目で右を見る。そこには恋人のシャープな横顔があり、彼は真剣な目で愛車の運転をしている。きりりと引き締まった表情でありながら、どこか余裕も漂わせて。
今日は二人で出かける、つまりデートの約束をした日だった。付き合い始めてから改めて初デートをするなど、あまりに照れ臭くてこそばゆい気持ちになるのが、少し嬉しくもある。普段車の助手席にはほとんど座らないから、車窓から見える景色は少しだけ新鮮だ。
入谷は先ほど、俺が住むマンションの近くまで車で迎えに来てくれた。彼の愛車はイタリアのメーカーのもので、こぢんまりとした小粋な佇まいを持っており、入谷の雰囲気によく似合っていた。外装も内装も鮮やかな赤で統一されていて、計器類も全体的に丸みがあって可愛らしい。車に特別な思い入れがない俺でも、シートに座るなり「おはよう。いい車だね、紫音くんに似合ってる」と何気なく言ってしまうほどの納得感があった。
「そうですか? ありがとうございます。カーセックスするには少々狭いですけどね」
入谷の返事はそんな、朝には似つかわしくない豪速球だったが。
「か……っ、朝から飛ばすねえ……」
「お褒めに与(あずか)り光栄です」
「別に褒めてはいないよ……」
そして如才なく言ってにこりと笑う入谷に、じっと熱く見つめられて困惑したのだった。シートベルトを締める動作がそんなにおかしいのだろうか? そんな焦燥混じりの疑問も、次の入谷の発言で蹴散らされた。
「しかし……オフホワイトのニット、ですか。非常に助かりますね」
額(ひたい)を押さえて軽く天を仰ぎながら、ふうと息を漏らす恋人。ああ、これはもういつものやつが始まったみたいだぞ、と俺は得心した。
今日の格好もさして面白みはない。大きい編み地が入った生成(きな)りのニットに、オリーブグリーンのストレートパンツ。何が入谷の琴線に触れたのやら。
「助かるって、何がだい?」と訊いてみる。
「そうですね。強いて言えば僕の命が、です」
「大袈裟だなあ」
「大袈裟ではありません。あなたのオフホワイトニット姿くらい破壊力があるものなんて、他にそうそうないですよ」
「助かるとか破壊力とか、矛盾してない……? よく分からないけど、お気に召したなら良かったよ」
「そういう無自覚なところが罪深いんですよねえ……」
車を発進させながらの嘆息はいやに悩ましげだった。そう言う彼の格好は上品なライトグレーのハイネック、膝の上にはグレンチェックの上着を畳んで乗せている。オフィスで会うときとは明確に違う雰囲気に、俺の方こそどぎまぎしているのだ。こういう気持ちを衒(てら)いなく口にしてしまえる恋人を、素直にすごいと感じる。
しばらく入谷の運転に身を任せ、幹線道路の流れに乗ったところで、俺はずっと気になっていたことを言葉にした。
「ところで、今日はどこで何をするの?」
そう、デートしましょうと言われただけで、入谷からは目指す場所も目的も聞かされていなかったのだ。昨日まで「当日までのお楽しみですよ」とはぐらかされていたのだが、もう聞いてもいい頃合いだろう。
入谷は目元を笑ませてこちらを一瞥(いちべつ)し、歌うように言った。
「柾之さんには、僕の買い物に付き合ってもらいます」
思いがけない返答に目を瞬く。
「買い物に? それはもちろん構わないけど。何を買うの?」
「服ですよ。柾之さんのね」
「俺の?」
予想外の展開に声が高くなる。
入谷はいたずらが成功した無邪気な子供のように、こちらへぱちりとウインクを飛ばした。
「ええ。あなたはスタイルが良いですから、少し華やかな格好もお似合いだと思いまして。僕が見繕った服を一度着てほしいと思っていたんです。もちろん、無理強いはしませんが」
入谷の中の自分のイメージに驚きつつ、似合わない気がするけどなあ、と反射的に返しかける言葉を飲み込む。
「……似合うかは分からないけど、紫音くんに選んでもらえるのは楽しみだな」
「嬉しいことを言って下さいますね」
入谷の声は弾んでいた。
彼にコーディネートしてもらえたら、新しい自分に出会える気がする。そんな風に期待感で胸を膨らませている自分が心底不思議だった。変わらないことを長年心地よく思い、変化は厭わしいだけだったのに。何なのだろう、この心境の変わりようは。
俺の人生に清廉な風を吹かせ続ける恋人は、車を海の方向へ向けて運転を続けている。
どうしようもなくこの人が好きだ。不意に、潮が満ちるように、そんなことを思った。
到着したのは、広大な敷地にショッピングモールやミュージアム、観覧車などを擁する一大観光地だった。
そのうちのショッピングモールへ連れ立って入る。この世の様々な店を一箇所に集めたかのようなフロアには、自分がいつも世話になっている量販店なども入っている。個人経営のセレクトショップなんかに案内されることを予期して若干緊張していたが、これなら無様なところを入谷に見せなくて済みそうだ。
「さて、どうしましょうか」
腕時計で時刻を確認している彼をちらりと見やる。
入谷はハイネックの上に丈の長い上着をさらりと羽織っていて、ホワイトのスキニーパンツに黒いショートブーツというモノトーンの組み合わせがばっちり決まっている。休日だけあってカップルや子供連れが多い中で、彼は際立って目線を集めていた。「見て、あの人」「格好よくない?」「モデルさんかな」とひそひそ囁く声が鼓膜まで届く。入谷がモデルなら俺は彼に付き添うマネージャーってところか。そう見えているのなら、それでもいいが。
顔を上げた入谷はにこりと笑んで、俺の手をあるショップの方へ引いていった。ほどよくナチュラルで、ほどよく上質な服が揃っている。買い物をしたことはないが、俺でも聞いたことのあるブランドだ。
「柾之さん。今考えていたんですがどうでしょう、時間を決めて互いに似合いそうな服を選ぶというのは。面白いと思いませんか?」
楽しげな提案に、俺はすぐにうなずくことができなかった。
「俺も紫音くんのを選ぶってことだよね? そういうの、センスないからなあ……笑わない?」
「絶対に、あなたが選んだものを、笑ったりしません」
入谷は真面目な顔になり、一句一句噛んで含めるように断言する。その気迫がどこか可笑しくて、口の端が自然に上がってしまう。
「うん、じゃあ頑張って選ぶよ。時間はどうする?」
「あまり長すぎても迷いそうなので……三十分でいかがですか? 試着室の前で落ち合いましょう」
「了解。じゃ、三十分後に」
こうして相手に似合いそうな服を選ぶゲーム≠ェスタートし、俺は時間を目一杯使ってあれこれと迷い、上下を合わせて三点選んだ。
誰かのために服を選んだことなど初めてで、脳の使っていない部分がかっかと熱くなっているような心地がする。入谷は集合場所で、かごを片手にもう俺を待っていた。
「ちょうど時間ですね。それではさっそく着てみましょう」
彼がにこやかに試着室を示すのに戸惑いを覚える。
「え、一緒に入るの?」
「大丈夫ですよ。中は広い造りになっていますから」
入谷の言うとおり、カーテンで仕切られた向こうは三メートル四方ほどの面積があり、三面を鏡が覆っていた。靴を脱いで踏み入れるとやたら毛足の長い絨毯が足裏を受け止める。ちゃんとした店の試着室はこういう感じなのか。
「それでは、僕が先に着てみていいですか? 柾之さんが選んでくれたもの、見たいです」
「う……うん。どうぞ」
俺は得体の知れない気恥ずかしさを感じながら自分のかごを相手に手渡す。ふむふむ、と中身を検分する彼の顔をなぜだかまともに見られない。自分の思考回路や趣味嗜好がそこに表れている気がして、裸に剥かれているのにも似た気持ちになるからか。
「では、試着してみますのでそちらを向いていてもらえますか? 目も瞑って下さいね」
俺は素直に体を回転させて瞑目した。空間が大きい三面鏡になっているから目を瞑れというのは分かるが、そもそも我々は何度も裸を見せ合っている仲だ。入谷の中では別問題らしいがなんだか面白い。
これならカーテンの外で待っても同じだったのでは、と落ち着かない気持ちでしばらく衣擦れの音を聴く。もういいですよ、と許可され振り向けば、もこもこした白いフェイクファーの上着に、ぴたっとした黒い革のパンツを纏った彼がいた。興がるような表情で、「いかがです?」と茶目っ気たっぷりに腰へ手を当てポーズを取っている。
普段の彼とはかけ離れた雰囲気の上下。それでも、入谷は隙なく着こなしていて。
俺が何かコメントする前に、彼は自らの格好をまじまじと見て言う。
「僕はあなたの中ではこういうイメージなんですね。少々意外でした」
「……紫音くん、ちょっと笑ってない?」
「断じて笑っていません」
すん、とした表情でこちらをまっすぐ見てくる目。その様子に、思わず俺の方がふっと噴き出してしまう。
「あなたが笑ったら本末転倒じゃないですか」
「ごめんごめん、でも似合ってるよ。いつもと雰囲気変わるね」
「ありがとうございます。あなたが選んで下さったものは全部嬉しいです。ですがこの革のパンツは実用性には欠けますね……生地が伸びないから、座ることもできないでしょう」
「そ、そうなんだ。ごめん知らなくて」
「謝る必要はありません。このファーのジャケットも可愛いです。ただ手入れのことを思うと、身につける機会という意味では少々――」
「い、いや、俺はただ君が着てるところを見たかっただけというか……もう満足だから」
「そうですか? でもこのライダースジャケットはいいですね。ちょっと厳(いか)つい雰囲気が気に入りました」
入谷はそう言いながら白いジャケットを脱ぎ、深い赤紫色をしたライダースジャケットを羽織る。普段の装いは彼の美人ぶりを引き立てているものが多いが、今着たそれは入谷から格好よさを引き出しているように見えた。男っぽさが増した恋人を間近で見て、つい胸がときめいてしまう。
髪を意図的に掻き上げながら、どうかしましたか?と訊いてくる入谷は、俺の内心などお見通しなのだろう。
元の服装に戻った恋人が、たくさん服の入ったかごを手ににっこり笑う。俺が選んだのとは比べ物にならないアイテムの数で、二個のかごがいっぱいになっている。
「さて、ファッションショーの開幕ですね。覚悟して下さいよ」
口元を弓形(ゆみなり)に引き上げる入谷の目が、どことなくギラギラと輝いて見える。
彼がまず手渡してきたのは、朱色に近い鮮やかなオレンジ色のダウンコートだった。
「ちょっと派手じゃない……?」と躊躇するものの、入谷は「まあ、物は試しです。いいから着てみて下さい」とぐいぐい来る。半信半疑のままそれを羽織ると、鏡に映った自分の姿は、不思議なことに案外しっくりと馴染むものだった。
「意外といけるでしょう?」
こちらの思考を読んだかのような入谷の言葉。
俺は素直にすごいと感じていた。自分より彼の方が、俺のことを理解してるんじゃないだろうか。
それから試着は怒涛のように続いた。数着のアウターの後はハイネックを着たり、総柄の個性的なシャツを着たり。そのどれもが俺の発想にはないものばかりだった。
「次からはボトムスですね」
目まぐるしい着脱に半ばぼんやりしてきたところへ、入谷が何やら含みのある呟きを漏らす。そして、俺の耳元で囁いた。「脱ぐの、手伝いますよ」と。
「え……?」返事を待たず、後ろから腰を抱えるようにベルトへ手が伸びてくる。タイミングを狙っていたとしか思えないスピードに、俺は慌てるばかり。
見えないはずなのに、入谷の器用な手は有無を言わさずベルトを寛げにかかる。カチャカチャという金属音がなぜだかいやらしく響く。
「待って、自分でやるから」
「どうぞ遠慮なさらず」後ろから届く声は楽しげだ。
「遠慮じゃなくて……! 自分は見るなって言ってたのに――」
「僕だって、あなたに手伝うと言われたら受け入れていましたよ?」
「き、詭弁だ」
そのうちに入谷の指先がパンツと下着のあいだに入ってくる。嘘だろ、と思うのと同時に肩がびくりと跳ねた。
こんなところで、正気の沙汰じゃない。薄い仕切りの向こうに、今まさに誰かがいるかもしれないのに。目隠しのカーテンが開けば、痴態のすべてが曝け出されてしまうのだ。
ふ、と入谷が笑う息が首筋にかかった。
「おや。気のせいか、少しばかり固いような?」
「紫音くん、駄目だって……」
「本当に? なら力づくで止めればいいじゃないですか。どうしてそうしないんです?」
「……っ」
淫靡な会話のあいだにも、入谷の指は陰茎全体を掌でこねるように刺激し続けている。自分の息が熱くなっているのを知覚するが、止めようがなかった。
いけないと思うのに、入谷に触られるとすぐ気持ちよくなってしまう。彼の指先は本能まで届き、弄(もてあそ)び、俺をただの動物に変える。
「ねえ。この前、どうして途中でやめたんです?」
手をねっとりと動かしながら、低く入谷が囁いた。
ぼうっとし始めている思考では、言葉の意味が上手く推し量れない。
「この前って、なに……」
「オフィスセックスした日のことですよ、柾之さん。僕はビール一缶で前後不覚になるほど酔ったりしないのに、あなたは途中で帰ってしまいましたね」
「あれは……でも」
「分かっています。僕のことを考えてやめたのでしょう? あなたの倫理観がしっかりしてるところ、好きですよ。でもね」
――本当はあの後、めちゃくちゃにしてほしかったんです。
いっそう低く密やかな囁きは、俺の心をどうしようもなく揺さぶった。腰に力が入らなくなり、片手を眼前の鏡に伸ばしてなんとか体を支える。はっとして前を見ると、俺たちが演じている醜態が三面にしっかり映されていた。別の生き物みたいな、入谷の蠢く手。煽られていた体温が一段と熱くなる。
「ですから今、溜まっているんですよ。あなたのこれが欲しくて」
どんどん熱く、大きくなっていく昂りを握りこんで、入谷が言い募る。
「ほら、見えるでしょう。あなたの腰、揺れてますよ。倫理面はしっかりしてるのに流されやすくて、いやらしくて、可愛い人だ」
「……っ」
「本当はお好きなんでしょう? 人目に触れそうな場所で、いけないことをするのが」
慈悲深くも意地悪くも聞こえる入谷の声音。
違う、好きなわけがない、とふるふる首を横に振る。俺はアブノーマルな性癖など持たないただの凡人だ。そのはずだった。入谷に出会う前までは。
けれど言えなかった。声を出したらあられもない喘ぎ声が漏れそうで、怖かったから。
「柾之。僕の可愛い人……」
「……ッ!」
入谷の掌が、昂りの尖端をぐりぐりと転がすように刺激してきて。
耐えきれなかったものが、下着の内側で弾けた。お漏らしのような量の、それ。
――やってしまった。こんなところで。
「紫音くん……今のはさすがに、やりすぎ……っ」
息も絶えだえに振り向いて抗議すると、入谷は存外驚いた顔色をしていた。すぐしゅんとした表情になり、すみません、と口にする。
「そこまでするつもりじゃなかったんです。本当です……。僕が責任を持って綺麗にしますから」
「責任、って」
「ここじゃ無理ですから、先に最寄りのトイレの一番奥の個室に行っていて頂けますか? 下着を調達してから向かいます」
「……分かったよ」
「合図として三回ノックします。僕だと分かるように」
力なくうなずいて、俺は汚れた下着の上にパンツを引き上げた。そのまま脱力したようにふらふらと試着室を出る。粘液で濡れた下半身は不快だったが、現状では打つ手がない。
男子トイレを探して奥の個室に入った。図ったように人がいない。すぐにでも下着を脱ぎたかったが、入谷が来たときに下半身を露出していたら変態だと思われそうなので我慢する。早く来てくれ、と願い続けて数分が過ぎる。その数分間が数十分にも数時間にも感じられた。
やがてコツコツという靴音が近づいてきて、扉の向こうで止まると、安心感で血が沸くようだった。
響く二回のノックの音。
反射的に指先が解錠しようと動いて、待てよ、と理性がそれを制止する。入谷はさっき、ノックを三回すると言わなかったか?
――このドアの向こうにいるのは、本当に入谷か?
にわかに緊張が全身を包む。指が強ばり、中途半端な格好で固まった。自分の鼓動の音が耳に雪崩れこんでくる。
どうすればいい。どうするべきなんだ?
永遠に引き伸ばされたかと錯覚するほどの、一瞬の逡巡。
そののちに、今度はしっかり三回ドアが鳴らされた。
俺は息急(いきせ)ききって鍵を開ける。悠然とした様子の入谷が、するりと身を個室に滑りこませた。
「ドキドキしましたか?」
「生きた心地がしなかったよ」
ほ、と息をついて正直に白状する。こうやって翻弄されても、入谷の涼やかな顔を見ると怒る気になれないのはどうしてだろう。これが惚れた弱みってやつなのか。
入谷は個室の奥にいた俺と位置を変わり、壁に設置されている棚に荷物を置く。そして俺を真正面から見据えて目を伏せた。
「さっきはすみませんでした。柾之さん、許してくれますか?」
「別に、元から怒ってないから」
微笑してみせると、入谷もほっとしたように相好を崩した。
「では、綺麗にしますね。あなたは立っていて下さるだけでいいので」
入谷が便座に腰を下ろすと、ちょうど俺の股間に彼の頭が近づく格好になる。おもむろに伸びてきた指がベルトを外し、柔らかくなった陰茎を外へと取り出す。どうするのかと見ていると、入谷は精液まみれのそれに、躊躇なく舌を這わせた。
責任を持って綺麗にするとは――こういうことか。直接的な刺激に体が反応し、血流が下半身に集まっていく。
ぺニスを舐(ねぶ)り回した入谷は口を離すどころか、楚々とした印象のある唇をぱくりと開け、昂りを一気に深く咥えこむ。
「し、おん……くん……!」
そこは熱くて濡れていて、全体を包むように吸い付いてくるのがたまらない。強すぎる快感に腰が抜けそうになる。熱の名残りを保っていたそこはすぐに快感を得て、恋人の口の中でむくむくと膨らんでいく。
入谷は俺の腰を抱えこむようにして、喉の奥まで使ってぺニスを咥内に収めた。自分の腰も無意識に前後に動き、昂りを何度も何度も最奥へと擦り付ける。入谷の舌は自在に蠢き、俺の快感を的確に引き出していく。伏せられた睫毛の震えは繊細なのに、どうしてこうも大胆な行為ができるのだろう。
ああ、もうそろそろ出そうだ、とせり上がってくるものを感じたとき。
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