140SS *04 Mar 2015 : Escapade with Blue* 冷たい夜に、熱い指先を想う。 いつでも私へ差し伸べられていた、彼の大きな手。その手を取って、彼の胸に洋々と広がる愛の海に飛び込んで、二人で溺れてしまえたら。 夢見る夜も確かにあるけれど、同時に、幸せになる権利など私には無いのだと思い知る。忘れられない夜だけが、心の底で冷え続けている。 ―冷たい夜の獣たち *08 Feb 2015 : other* 女の腕が男に絡まる。 「なぜ手を出さなかったの」 「俺の汚れた手で、綺麗な君を汚すのが嫌だった」 「私は綺麗でもないし、貴方の手は汚れてもない」 そう言っても響かないでしょうね。呟いて、女は聖女の如く笑む。 「代りにこう言うわ。その手で私を汚して」 「煽るのが巧いな」 男が笑い、ベッドが軋む。 ―Please make me dirty. *31 Jan 2015 : Escapade with Blue* 眼窩から抉り出された眼球は、どれくらい元の色を保っていられるものなのだろうか。 僕は稀に、そんな妄想に耽る。時として、妄想は夢の中で現実となる。 彼の血色の瞳を抉って、自分の空色の目玉を捨て、彼のものを昏い穴へと嵌め込む。彼の目には世界が何色に映るのだろう。 僕はそんな、赤い夢を見る。 ―Ich schaue auf die roten Traum. *31 Jan 2015 : other* 古代ローマでは、と授業中先生が声を張る。 「娯楽として奴隷と竜を闘わせるのが流行しました。竜は人の言葉が分かる唯一の生き物です。そんな酷い事をしては駄目ですよ」 知ってるよと言いたげに、クラスの皆がはあいと返事をする。窓の外では今日も、物資や人を乗せた竜達が、空を縫うように飛び交う。 ―幻のドラゴン(title by spitz) *17 Jan 2015 : Escapade with Blue* この男も1箇所だけ変わった。目。汚い大人の目。 「お前だってそうだろ」 私は同意する。徐々に汚れて、手にあったものを失っていく。それが、人生の道筋なのだろうか。 「小難しい事じゃなく、お前には今すぐ考えるべき事があるだろ。ヒント、今の時間」 夕飯か。 「そ」 ヴェルが汚い大人の顔をして笑う。 ―汚れる *17 Jan 2015 : Escapade with Blue* 初めて見た時、炎の化身だと思った。 燃え盛る火の髪に、鮮血の瞳。微妙に異なる赤が、幼い僕の心に強烈に焼き付いた。 僕は赤に焦がれる。脈打つエネルギーの色。力の象徴。僕の持つ、繊細な金と純粋な青は、力なき者の象徴に思える。お飾りの烙印。 だから僕は、彼が憎くて、たまらなく羨ましいのだ。 ―ないものねだり *03 Nov 2014 : other* 窓を触ると冷たかった。 トンネルと寂れた漁村が交互に現れる中を、唸りながら列車は進む。乳白色の陰鬱な空と、同じ色をした海が果てしなく広がっていた。水平線は淡く空と混じって、境界はぼんやりと霞んでいる。波は岩肌に打ち寄せてしぶきをあげるが、音は列車の中までは届かない。 冬が来るのだ。 ―Scenery of Winter ▲ back ▽ |