ナルトとサスケ


=鉄の国 宿屋=

ナルトが気を失ってから一時間弱経過した頃、ナルトは目を覚まし、勢いよく起き上がった。

「気が付いたか」
「……俺ってば」
「気絶したんだよ。心配かけて本当」

部屋にいるのはヤマトとサキだけ。ナルトはカカシとサイのいない状況を見て、二人がサスケを始末しようとするサクラを追っていったことを察した。

「お前は僕とサキと一緒に里へ帰る。カカシ先輩の命令だよ」

ナルトは立ち上がって壁に寄せていた自分の武器ホルダーを取りに立ち上がる。ヤマトはため息をついてナルトを覆うように木遁で牽制した。

「悪いけどサクラのことはカカシ先輩に任せるんだ。いいね」
「分かってる……もう少し休んだら里に帰るってばよ」

ナルトは不貞腐れながら布団へ戻った。やつれたナルトを見てサキは温かいお茶を勧めるが、いらないと言って断られた。
木ノ葉の里に帰るにもフラフラしているのが心配なため、ヤマトは旅館の女将にお粥を作ってもらってくると言って部屋を出て行った。

ヤマトが出て行ったのを確認して、ナルトは布団の中から顔を出してサキを呼ぶ。

「サキ」
「何?」
「サキは、、サスケのこと始末すべきだと思う?」
「……私はそうは思わないよ」

同期も他里の忍も皆がサスケを敵として倒そうとしている中、サキだけは違うと言ってくれる気がした。尾獣を自由にしたいと言うサキならきっと――考え通りの答えを聞いてナルトはホッとする。

サキはその様子を見て、もうナルトの中で答えは出ているのかもしれないと、背中を押す気持ちで自分の考えを述べていった。


「私は相手のことを理解しないまま、ただ力任せに奪うのは反対。サスケが何に怒って、何を憎んでるのか、本当にそれはどうにも出来ないのか……ちゃんと量らないまま始末するなんて言いたくない」

「それに私は大切なものは、絶対に見放したりしないよ。犯罪者だろうが化け物だろうが誰に何と言われようが……救うまで絶対に諦めたりなんかしない。私の信念」


ナルトに笑いかけると、ナルトはまた布団の中に顔を埋めてしまう。その中から籠った声で「サキは……カッコいいってばよ」と聞こえた。

「ナルトだってカッコいい信念持ってるじゃない」


『――真っ直ぐ自分の言葉は曲げねえ』

ナルトが下忍になってから口にしている忍道だ。
サキはナルトにサスケを諦めて欲しくない。ナルトにこれ以上重荷を背負わせてはいけないことは分かっているため、それ以上強くは言えないけど願わずにはいられなかった。


少しだけ沈黙があって、ナルトはまた布団の中で声を発する。

「俺ってば、サスケに会いてえ。会わなきゃアイツのこと分かんないままだ」

芯のある声で、とにかく前に進もうとする気概が感じられる。サキがそんなナルトを止めるわけはなく、ナルトが潜っている布団のそばに歩み寄る。

「行っておいで。ナルトの答え待ってるから」
「うん」
「あと、宿屋の床に穴を開けるやり方は推奨できません」

べろんと布団を捲るとクナイを握っていたナルトと目が合う。

「げ……」
「ヤマトさんは何とかしておくから窓から出ていきな」
「おう。ありがと、サキ」

ナルトは旅館の窓から外に飛び出し、サキはヤマトが来る前に窓の鍵をかけて気温の下がってしまった部屋を暖めた。そしてナルトの代わりに自分の影分身を変化させて布団に潜り込ませた。

数分後、ヤマトがお粥を持って部屋に戻ってきた。
何食わぬ顔でサキは「ナルト、起きてる?」と自分の影分身に声をかけた。

「気分はどう?お粥を作ってもらったよ」
「悪いけどお腹空いてないってばよ」
「あら……じゃあもう少し寝かせてあげましょうか」
「そうだね」

バレていないことに安心して、サキも一眠りした。ヤマトも釣られていつの間にか疲れから眠ってしまう。

一時間後に目が覚めてヤマト、サキ、サキが変化したナルトは三人で木ノ葉の里に戻ることとなった。
小さい頃から共にいるおかげで変化中の口調も歩き方さえもヤマトに不審がられることはなかった。


流石にこのまま里に着くのはまずいかなと思い、木ノ葉の里に着く直前にヤマトに怒らないでほしいのですがと言ってネタバラシすると、顔にたいへん濃い影をつけてドスの利いた声で説教された。

(あ、これは怖い……)

けれどサキはヤマトに怒られながら、どこか上の空で今度会うときはナルトが晴れやかな顔になっていることを信じていた。

「ちゃん聞いてるの!サキ!!大体君はねー!」

ヤマトの説教は林の中で一時間にものぼり、二人ともヘロヘロになりながら木ノ葉の里に帰ってきたのだった。



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