合流


=鉄の国 宿屋=

我愛羅一向と共にナルト達のいる宿屋へ戻ってきた。
サキが飛び出していった時と違って、サイが合流しており、ナルトの顔つきがより辛そうだった。
着いて早々テマリから会談での出来事とカカシが火影になる予定で他里が動くことが伝えられた。

「そこまで荒れた会談になったとはね」
「俺は火影ってのはあんまり乗り気じゃないんだけどさ」
「そんな悠長な事言ってる場合か」

状況が状況なだけにカカシも本来火影という柄ではないだろうが、渋々承諾した。

「それとサスケですね。会談まで襲撃するようになるとは」
「ナルト……言っておくが、これは八尾と九尾、つまりお前を守る戦争でもある。そして忍の世界のため、俺は風影として命がけでお前を守る。暁の配下としてうちはサスケが俺たちの前に立ちはだかるなら容赦はしない」

我愛羅は五影会談を襲撃したサスケと相対しており、サスケの"現在"を一番知っている。だからこそナルトに言い聞かせる。

「サスケはお前を見ようとはしていない。自ら闇を求めている」

「ナルト、お前は自ら火影になる男だと言ったな。俺は風影になった。影の名を背負う覚悟を決めたなら、サスケの友としてお前が本当にやるべきことをやれ」

我愛羅はナルトの肩に手を置いたが、ナルトは納得できない素振りでそれをはらう。見かねたテマリが帰るぞと我愛羅に声をかけた。冷静なところが頼もしい。

「伝えることは全て伝えた。はたけカカシ、貴方が火影になるものとして砂は動く。同盟国として情報の混乱がないよう願う」
「了解した……」
 
悩むナルトに対し、今度は友人として我愛羅は言葉をかけた。過去に助けられた分、ナルトのためを思ってのことだった。

「俺はお前を友だと思っている。かつての俺にとって、友とはただの言葉。それ以上でもそれ以下でもなかった。だがお前とサキに会って気づいた。大切なのはその意味だと。その意味する事が何なのか、お前はサスケのために何ができるか、よく考えろ」

そうして我愛羅達は砂隠れの里に帰って行った。


サキは立ち尽くすナルトに声をかけようとしたが、カカシに手を掴まれ止められる。

「自分で答えを出すしかないよ」
「でも……」

ナルトがこんなにまで追い詰められてるのを見るのは初めてだ。我愛羅の言葉もサキが別行動する前にかけた言葉も重荷になってるだろうが、やはり合流前に比べて様子がおかしいことが気になる。

カカシが言うように、ナルトが自分で決めるしかないことは理解しているが、崩れそうなナルトを見放したくない。
しかしカカシの手を振り払うことも出来なかった。
どちらも大切で尊重したい。
サキは小さな声で「すみません」と謝り、手を離してもらった。


「で、これからどうしましょうか。一旦木ノ葉に帰って会談でのことを里に伝えなきゃいけないと思いますけど……サクラのことも」
「サクラ?」
「サスケを追ってるんだ。他の里に殺されるくらいならってね」
「な、、」

ナルトがこんなに乱れてる理由はサクラと同期の苦渋の決断が関係していた。サキがナルトの方に視線を移すと、小刻みに肩が震えていて、今にも倒れそうだった。

「サクラには僕の本体がついています。サスケには決して近づけません」
「とは言っても直接言って説得した方がいいでしょう……よし、ヤマト。お前はナルトとサキを連れて里に戻ってくれ。俺はサクラを連れ戻す。サスケに敵わない。死にに行くようなものだ。会談のことは忍犬を走らせる。急ぎだからな。サイ、サクラのところまで案内頼む」
「はい」

ヤマト、カカシ、サイの会話が進む中、サキはとうとう来たナルトの限界に気づいて、カカシの隣から駆け出した。

「うっ、、フッ、、、ぅ」
「ナルト!」
「どうかしたのか」

崩れ落ちる前に、ナルトの正面に回って身体を受け止め、そして雪の上に座って背中をさする。

「ハァハァハァ、、ハッ、、ハア」
「ゆっくり、息して」
「過呼吸だ」
「ハッ、ハァ、、ハッ」

耳元でナルトの苦しそうな吐息が繰り返され、サキは精一杯落ち着かせようと声をかけた。

「大丈夫だから。混乱しちゃったよね。大丈夫、ゆっくり、息吐いて」
「ハッ、、ハァ、、、、ッ」
「大丈夫だよ、ナルト」


次第に呼吸が安定して、ヤマトに宿で休んでから里に戻るよう頼む。ヤマトは了解し、サキの腕の中で気を失っているナルトを背負った。手伝うと言ってサイも宿の中に消えていく。

ナルトが運ばれていくのを見ながら、サキも立ち上がり雪をはらう。しんとする宿の前でカカシと二人きりになる。


「これ返すね」

カカシはベストの中から額当てを取り出した。

「おかえり」

それをサキの頭の上にあてがって、首の後ろで布を縛る。人につけてもらうのはくすぐったくて、首が縮こまった。

その様子を見て、カカシは結んだ後も首筋、耳の裏、輪郭をわざとなぞってサキの表情の変化をまじまじと観察した。
最初はくすぐったそうにしていたが、次第に照れて頬が染まって行くのを見て、カカシのピリピリとした気持ちも和らいでいった。変な気になる前に手を止めてスッと離す。

「カカシさん、任務中は……!」
「ごめんね、もうしないよ。十分癒されたから」

カカシは一歩後ろに下がってサキと距離をとる。
この切り替えぶりが何とも憎らしくて、サキは顔を逸らしてカカシに「サクラを追うなら気をつけて」とつんけんした態度で声をかけた。

タイミングよく宿からヤマトとサイが出てきた。
カカシはヤマトに後を任せて、サイと二人サクラを追った。

ヤマトと二人になり、宿に戻る。
ナルトの眠る部屋に通され、ナルトが起きるまですぐそばで見守るのだった。



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