私の友達


=木ノ葉の里 仮設テント外=

「サキー!!」
「え゛っ!!!?」

カカシと一緒にテントを出てすぐ、何者かが横から飛び込んできた。何の警戒もしていなかったため、そのまま地面に滑り込む。

「何何なに!?」
「悪い!ダンゾウって奴見つからなかった」

飛びかかってきたのはナルトで、思い詰めた顔で謝ってきた。一旦ナルトを剥がして、二人で立ち上がる。砂をはらいながら昨日のことを思い返す。

ナルトはダンゾウにガツンと言ってくるとテントを出て行ったのだ――


「昨日からずっと探しててくれたの?」
「ああ。だってそいつがサキのこと!」
「……ありがとうね。その気持ちだけで十分だよ」

まさか一日かけて探しているとは思わず、ナルトがそれだけ自分のために怒ってくれたのがなんだか嬉しかった。
大丈夫だと伝えると、ナルトはサキの顔をまじまじと見つめてきた。

「ん?」
「なんか良いことあった?」
「え!?」
「昨日すんげーげんなりしてたのに、今日はスッキリした顔してるから」
「ああー」


昨日といえば、カカシに思いの丈を全て話して慰めてもらったし、九尾とは全て思い出した上でこれからの事を話し合えた。
それに先ほど――カカシの照れ顔を思い出して口元が緩む。

(そうか……自然に笑ってだんだ)

「うん。モヤモヤしてたのが晴れたからかな」
「そっか!安心したってばよ」

ナルトは後ろに手を組んで少しだけ体を横に反らす。嬉しいことが表情や声色だけでなく体にも表れていた。

サキはまだナルトに前世のことを詳しく伝えていない。昨日はナルトに対して嫉妬のような感情を抱いていたけれど、今日はもう吹っ切れている。


「ナルトに前世のこと話したいんだけど時間ある?」
「俺もサキに聞いてもらいたい話がいっぱいあるってばよ」

一緒にテントを出てきたカカシに目配せすると、「行っておいで」と背中を押された。


***


里の端に残った木の陰に入って、サキは念の為に結界を張った。
まずはナルトから、サキと離れた後の話をする。

サスケに再会したこと、風遁螺旋手裏剣という強力な術を身につけたこと、サスケが大蛇丸を倒したのに里に戻ってこなかったこと、暁との戦いでアスマと自来也が殉職したこと――
師匠の死後、イルカが立ち直らせてくれたこと。

そしてペインとの戦いを振り返るのだった。
自分を庇ったヒナタが杭で刺された後、九尾チャクラが暴走して尾が八本まで出た。だがそれを四代目が止めてくれたのだ、と。
四代目はナルトの実の父親だと衝撃の事実も添えて。

「四代目が、ナルトのお父さん……」
「俺もビックリした」
「ということは、ナルトのお父さんを殺したのは九尾ってこと……」

サキは何と言えばいいのか分からない気持ちに唇を震わせた。ごめんなさいでは許されないのだから。

「サキがそんな顔することないってばよ」
「そういうわけにはいかないよ」


そして今度はサキが尾獣のことを話す番。
前世のことをカカシに話した時と同じく語っていく。
昨日とは違って涙は込み上げなかったが、四代目がナルトの父親だという事実に動揺したままだった。


(ただでさえナルトは人柱力で、九尾を封印されたことで里から嫌われて。それなのに父親も九尾に殺されてたなんて……)

(人一倍九尾のことを、尾獣のこと憎んでいるんじゃ)

サキは前世のことを語りながら、昔ナルトを怒らせたことを思い出す。
ナルトに近づいた理由が九尾の封印を解くためだったということ。その事についてはもう謝っていて解決済みだけれど、当時サキは自分の"夢"を語った。


『九尾の封印を解きたい。ナルトも九尾も自由になってほしい』

それに対するナルトの気持ちは――

『九尾のこと全部は納得できてないけど、俺もサキとはこれからも一緒にいたい』


あの時のナルトは九尾のことを良いように考えられる状況じゃなかった。それでも一緒にいると言ってくれた。
けれど、今同じ"夢"を語ったらナルトはなんて言うんだろうか。不安から胸がチクリと痛んだ。


(ナルトに嫌われたら……)

(でも、尾獣を自由にするのは私の使命だ)


前世を全て話した後、意を決してナルトに本心を伝える。

「私、暁に奪われた尾獣を取り返したい。小さい頃も伝えたけど尾獣を自由にしたい。絶対に、これだけは曲げたくない」





全てを聞いたナルトは、サキの心配とは逆のことを考えていた。
尾獣が人に封印されるようになった訳を知って、九尾たち尾獣が自分たち人間を恨む理由が理解できた。
ならば前世が尾獣だと言うサキはどうなんだろうか。自然と気になり、思いのまま質問する。


「サキは……人間を、俺たちを恨んでる?」


予想外の返しにサキは言葉を詰まらせた。ナルトが心の底を覗いてくるみたいでドキリとする。
けれどナルトの質問への答えは決まっていた。
きっと前世の自分もこう言うだろう。

「恨んでないよ。私は人も尾獣もどっちも好きだよ。だからこそ両者の間にある憎しみを消したいと思ってる」
「………なら俺も協力する」

言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
瞬きも忘れてしまうくらいには驚いた。

「な、、だってナルトのお父さんは」
「父ちゃんもエロ仙人も長門も忍世界の平和を望んでた。俺ってば、三人の夢を預かってる。サキの話を聞いて平和な世界のためには、サキの……尾獣の願いも叶えないといけないって思った」

ナルトの目は嘘をついていない。
ナルトがこんなにも精神的に成長しているとは、サキはまだ衝撃で上手く口が動かなかった。

「サキは俺の友達で、幼馴染で……家族みたいに思ってる。だからサキの夢を手伝いてえ」


ぼんやりとナルトの後ろに光が差して見えた。
どこか懐かしく安心する、温かく優しい光。
前世のサキが願っても掴めなかった、人と尾獣との架け橋だろうか。

ナルトならもしかしたら、そう頭によぎった。


「ナルトは、もし私が完全な尾獣になっても同じこと言ってくれる?私が人でなくなっても友達だって言ってくれる?」
「当たり前だってばよ!」


間髪なく返された返事がたまらなく嬉しかった。
そして確信した。この人だと。


「ナルト、友達になってくれてありがとう。私ナルトに出会えて本当に良かった」
「俺だって。あの時サキに河原で声かけてもらえたのすげー嬉しかった。ずっと一人ぼっちで辛かったから……声をかけてくれてありがと」


ナルトとサキはお互いの目を見つめ合いながら、数秒後に吹き出した。子供の頃から一緒に育ってきたのだ。今更こんな事を話すのは照れくさい。
けれどとても大切な話だった。


(ナルトなら本当に人と尾獣の架け橋になってくれる。信じよう――私の大切な友達)

(大丈夫、前世の私。成し遂げてみせるよ。絶対に)




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