奪還


=暁 アジト=

暁のアジトの外は大岩で塞がれており、そこには五封結界が張られていた。近辺に"禁"と書かれた札を五枚貼ることで成立させる結界で、術の発動難易度は高くないものの、それらの札を同時に剥がさない限り解除出来ないため解術難易度は高いと言える。

風影とサキの奪還命令を受けた第七班、そしてガイ班は協力して五封結界を破り、サクラの綱手譲りの怪力で大岩を破壊して、第七班、そして砂隠れの里の相談役のチヨの四名がアジト内部への潜入を果たした。

まずナルトの視界に入ったのは我愛羅に座るデイダラの姿だった。

「さて、どいつが人柱力かな……うん」

怒りにより九尾チャクラが滲み、ナルトの青い目が赤く変化する。

「てめーら!ぶっ潰す!!」

ナルトは大声で叫んだ。サソリもデイダラもその言葉に思わずクスリと笑う。イタチの言った通りだと。

「我愛羅!何のん気に寝てんだよ!立てよ!!」

「おい!我愛羅!!聞いてんのか!」

我愛羅は一向に返事をしない。
何故なら我愛羅は尾獣を抜かれ、既に死んでいるからだ。
ここに来る道中、チヨから人柱力の説明を聞いた面々はとっくに我愛羅が目覚めない理由を知っていた。

ナルトは涙を浮かべ、それでも信じれないと暁の元へ飛びかかろうとした。
それを制したのはカカシだった。

「落ち着け。考えなしに突っ込めば全滅だ。向こうにはサキもいる」
「くっ……サキ!何でサキがいて!クソッ、我愛羅がこんな事になってんのに、何でお前まで!!」

怒鳴らずにはいられなかった。受け入れ難い現実に対して。だんだんと声が小さくなって、ナルトは近くにいたカカシにしか聞こえない声で呟いた。

「サキは……だって、尾獣を守るんだろ……」
「ナルト……」

その間にもサソリとデイダラはどちらが九尾の人柱力を狩るか揉めていたが、デイダラが勝手に我愛羅とサキを起爆粘土の鳥に乗せて外に飛び出していった。
もちろん狙いのナルトが追ってくる事を確信しての行動だ。

「待て!コラアア!!」

カカシはサクラとチヨにガイ班と合流するまで無茶をしないよう告げ、後先考えずに暴走するナルトをカカシは追いかけた。

「変わった人柱力だな、お前。人柱力は根暗で人嫌いと聞いてたがな。それにこの我愛羅という奴も珍しい。ここまで他人に思われてた人柱力もいなかったが」

「コイツを除き、今まで二匹。人柱力を俺の仲間が倒したが、そいつらの仲間も里の者も誰一人として助けようとする奴はいなかったらしいぜ。うん」

「それどころかむしろ喜んでくれる奴がいたそうだ。ククク……」

「可哀想な嫌われ者同士放っておけなかったか。うん?我愛羅は一尾を抜かれて死んだ。お前もじきにそうなるんだよ!」

デイダラはナルトを逆撫でる発言を繰り返した後で、空中を自在に飛びアジトのある場所から離れていった。
ナルトは当然それを追いかけ、カカシもナルトを追いかける。
九尾の人柱力であるナルトと一対一になりたいデイダラは、写輪眼のカカシを振り解くべく起爆粘土のトラップを幾つも張った。

(悪いな旦那。人柱力二匹目もオイラが貰うぜ、うん)




=森の中=

怒りで独断専行するナルトをカカシはなんとか止め、新しい写輪眼"万華鏡写輪眼"でデイダラの右腕を空間ごと消失させることに成功した。

(外した、まだ結界空間の位置と大きさがうまくコントロール出来ないな)

カカシはもう一度デイダラを見て、空間を歪ませた。
デイダラはもうその手には乗らないと警戒し、そこに隙が生じた。攻撃の機会を伺っていたナルトが茂みから現れ、デイダラの鳥ごと螺旋丸で吹き飛ばした。

地面に当たって真っ二つになった起爆粘土の鳥をナルトは影分身で回収する。
頭には我愛羅が、尾にはサキが包まれており、すぐ粘土をむしり二人を外に出した。

サキの方は発熱して息が荒くなっているが生きており、分身のナルトは安心した表情を浮かべた。
しかし我愛羅は息をせず、体が冷たく固くなっていた。

「ぶん殴ってやる……」
「わかったわかった。また近いうちにな、うん」

去ろうとするデイダラに対し、既に森の中に分身を散りばめ準備していたナルトは猛攻をしかけた。
地面に磔にして何度も何度も顔を殴りつける。
怒りに任せて螺旋丸を腹に喰らわせたが、そのデイダラは粘土の変り身で――

本物のデイダラは茂みに身を隠していた。

対象を見失ってしまったナルトから赤いチャクラが湧き出た。ポコポコと溢れては破裂するそのチャクラはナルトの怒りの感情に連動して、一本の尾を形作る。
本体が変化に合わせ、カカシの側にいた分身のナルトも苦しみ始めた。

(これが妖狐の衣……)

カカシは三年の修行から帰ってきた自来也からナルトの九尾化について忠告を思い出す。もしもナルトから九尾のチャクラが溢れることがあれば尾が一本の内に止めろと。

カカシは横目で気絶するサキを見た。

(サキは目を覚ましていない。こういう時、あの鎖の術が有効なんだろうけど……)

「落ち着け、ナルト」

カカシの声に耳も貸さずに、妖狐の衣を纏ったナルトはカカシを攻撃した。ナルトが理性を失っているのは明らかだった。
そのためカカシは自来也から事前に渡されていたチャクラを抑え込む封印札をナルトの額に張り付けた。
それは尾の二本目が現れかけていたところだった。

ナルトが正気に戻り一難去って、暁のアジトで激戦を終えたサクラとチヨが合流した。さらにガイ班も合流し、茂みに隠れていたデイダラの撃破に成功する。

敵がいなくなったことを確認し、みな安堵する。

「サクラちゃん」

分身ナルトが我愛羅とサキを連れてきた。



prev      next
目次



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -