砂へ


=砂隠れの里=

熱い砂漠を抜けて大岩に囲まれた砂隠れの里にやってきた。到着は昼過ぎ、里入りするとホワイトブロンドの女性が出迎えてくれた。髪を四か所で結び、背中には大きな扇子を背負っていて、三年半前から少し容姿が変わっている。

「テマリさん!お久しぶりです!」
「よく来たな。サキも上忍になってるとはな。驚いたよ」
「あはは、結構頑張りまして」

三年半前もお姉さんっぽかったが、今は大人の女性らしさが漂っていて綺麗だなとサキは思う。

出迎えを任されていたテマリはそのままサキを宿に案内して荷物を置かせた後、全体スケジュールを説明してくれた。
最初の三日間はテマリが案内するのだが、彼女は中忍試験の委員も任されているようで、以降は他のものに引継ぎをするようだ。

「実際の任務は明日からだから、今日はゆっくりしてくれ。それと我愛羅も今はバタバタしているが、夜には体が空くはずだ。会うだろう?」
「もちろん!」
「それまで里を案内するよ。ついてきな」
「お願いします」

砂隠れの里は砂漠に囲まれた場所にある。
雨はなかなか降らず、水は大事に使うように言われた。
建物も日干しレンガが多く、木ノ葉の里とは違った魅力があった。

「それにしても、暑いね」
「木ノ葉に比べたらな。でも夜はかなり冷えるよ」
「そっか、風邪引かないように気をつけないと」
「そういえば我愛羅と手紙のやり取りしてるんだって?」
「うん。我愛羅何か言ってた?」
「三年前に木ノ葉へ手紙を出すにはどうしたらいいか聞かれたんだ。聞かれた時はビックリしたもんだ。弟と仲良くしてくれてありがとうね」
「私も誰かに手紙出すなんて初めてだったからかなり楽しんでるんだ。あ、もちろん機密事項とかはやり取りしてないから安心してね」
「そりゃ郵送前に一応確認入るだろう。べつに疑ってもないから安心しなよ」





夕飯は砂でも名店だという焼肉屋に案内された。見覚えのある看板の文字に、我愛羅が手紙で言ってたところだと思い出してクスリと笑った。

店内で同期の様子はどうかとか、どんな術を覚えたとかテマリと話していると、「待たせたじゃん」と懐かしい声が聞こえた。
そこには紫のフェイスペイントが特徴的なカンクロウと、その後ろにサキが会いたくて止まなかった人物がいた。

「我愛羅!!」
「久しぶりだな、サキ」
「会うのは中忍試験以来だね。わー身長いつの間にか抜かされてる。元気そうで良かったよ!」
「サキもな」
「それに風影就任おめでとう!早く直接言いたかったんだ」
「手紙で何度も聞いたが、口にされるとまた嬉しいものだな」
「ね!」

我愛羅とサキが二人きりの会話を楽しむ中、カンクロウが悔しそうに声を上げる。

「おいおい、オレは無視かよ!」
「諦めろ、カンクロウ」
「あ、カンクロウさんも久しぶりですね!」
「ついでみたいに言うな」

四人で七輪を囲み肉をつつく。我愛羅は自分から話を切り出すようなことは少なかったが、代わりにカンクロウとテマリが我愛羅のことをベラベラと話した。
二人とも弟をしっかり支えてきた三年間らしく、仲睦まじくなった三兄弟にサキは終始笑いながら話を聞いていた。




=砂隠れの里 宿=

早いもので一週間が経ち、任務も終盤に差し掛かっていた。

砂に来てからは毎夜守鶴に会いに行き、その日あったことなどを報告していた。うざいとか帰れとか口では言ってくるものの前みたく強制退場はさせられなかったので、仲は良好になってきたと思われる。恐らく守鶴も九尾と一緒で素直じゃないのだ。

「よし。報告書は書けたし、守鶴に会いにいって今日はもう寝ようかな」

照明を消して、ベッドに潜り込む。
砂隠れの夜はかなり冷え込むし、とても静かだ。
けれどその晩は任務中一度も聞いたことのない鳥が飛ぶ時の音が聞こえた気がして、気になって窓の外を見上げた。
真っ暗な空に何か見える、気がする……

目を凝らしていると、珍しいことに守鶴の方から精神空間にサキを呼び込んだ。




=砂の空間=

砂漠の空間に守鶴が仏頂面で座ってるのは見慣れた光景だ。いつもは自分から呼び込むことはないのに、どうしたのかサキは尋ねた。すると守鶴は驚くべき情報を持ってきたのだった。

「おい、暁のお出ましだぜ」
「暁!?じゃあ我愛羅は!?」
「今敵と戦い始めたところだ。里の上空で戦ってるぜ」
「人数は?」
「一人だ。爆弾魔だぜコイツ」
「……分かった。そっちは我愛羅に任せる。恐らくもう一人、暁の人間が来てるはずだから私はそっちを探す。加勢されると不利だ」

十中八九、我愛羅の中の守鶴を狙いに来たのだろうが、サキのことを狙ってきた可能性だって捨てきれない。
他里で交戦して、巻き込むのはなるべく避けたい。
サキは急いで着替えて宿の外に出た。

(まずは出入り口から……)


prev      next
目次



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -