任務失敗


=火の国 終末の谷=

森を抜けて大きな滝が現れた。
真下に位置する岩場、そこに傷だらけのナルトが横たわっていた。

「ナルト!!」

すぐに駆け寄って、脈を確認すると気を失っているだけなのが分かって一先ず安心した。
でもそれ以外に人影はなく、遠くの臭いまで嗅ぎ分けたパックンがサスケはもう辺りにいないと告げた。

「二人の戦った後か」

一足遅かった。サキは周りの戦ってた痕跡を見やった。崖が抉れ、岩場がボコボコとなっている。

「どんな戦いをすればこんなに……ッ」

滝面を挟んで大きな石像が目に入った。
人型のそれは自然物ではなくて明らかに人工物だ。

突然、サキの頭に痛みが走る。

「とりあえず応急処置して、里に運ぼう……サキ?どうした」

サキは頭を抱えながら、その顔岩を交互に見つけた。


『どうにか封印して、各国に分配する』

『綺麗だな、君は。儚くて壊れてしまいそうだ』

『綺麗だ、サキ』


知るはずもない声が二人分。恐らくこの石像の人達だ。

「サキ!!」

様子のおかしいサキを揺さぶり、カカシは声を荒げた。意識が現実に戻って、カカシを見つめる。

「…………カカシさん」
「大丈夫か?」
「あの人たち、誰?」

サキは石像の人物を指した。

「初代火影の千手柱間様とうちはマダラの事?」
「千手柱間とうちはマダラ……」
「彼らがどうしたの?それより今はナルトを」
「すみません。里に戻りましょう」
「本当に平気?」
「はい、大丈夫です」

分かったと言って、カカシはナルトを抱えて先に森の中へ入った。
サキは後を追う前にもう一度振り返り、二人の石像を見つめた。

(貴方達は誰なの?)




=火の国 森の中=

カカシとパックン、サキ、それに怪我をしたナルトは里へ急ぐ。
ナルトはカカシの背中で意識を取り戻し、目を開いた。

「カカシ先生……サスケは?」

カカシもサキも回答出来なかった。
同じタイミングで里から応援できた医療班が二名駆けつけた。

「うずまきナルトの容態は?」
「大丈夫」
「うちはサスケは?」

沈黙が答えだった。サスケ奪還任務は失敗に終わったのだ。サキは拳を握りしめながら、医療班に他の同期のことを尋ねた。

「あの、他のメンバーは無事ですか」
「奈良シカマルは軽傷、犬塚キバと赤丸も怪我は酷いですが命に別状はありません」
「日向ネジ、秋道チョウジの二名が重傷で、今のところ予測がつきません」
「そうですか、」

それから皆黙って森を走り、里に着くとすぐにナルトを中央病院に運んだ。




=木ノ葉の里 中央病院=

サキはカカシと共に火影の元へ報告に上がる。
綱手は治療を終えた後で、チョウジもネジも安全ラインを確保したことを教えてくれた。

「私ナルトの病室行ってきます。カカシさんは?」
「俺はいいよ」

カカシも部下が里抜けした事実がかなり堪えているようだった。そっとしてやれ、とでも言うようにサキの肩に手が乗った。綱手の手だ。

「サキ、私も行くところだ。一緒に行くとしよう」





ナルトの病室の前に着くと、サクラが扉の手すりを持ったまま立ち尽くしているのを見つけた。

「見舞いか?」

サクラは綱手の声に顔を上げた。動揺が顔に現れており、今ここで、サスケが戻ってこなかったことを知ったのだと分かる。

「春野サクラだったか、情報が早いな」
「あ、えっと…」
「私たちも見舞いだ。扉を開けてくれるか」
「……はい」

三人で病室に入ると、顔と全身を包帯で巻かれたナルトに、やつれきったシカマルの二人がいた。二人とも命がけで任務に当たったことを示していた。
サクラの顔を見て、ナルトは自身にかかる布団を握りしめた。

「ごめん……サクラちゃん」
「何でアンタが謝るのよ」

任務に向かう前、サクラの"サスケを連れ戻して"という一生のお願いに対してナルトは"絶対連れ戻す"と約束をした。
今回、その約束は果たされなかったーー

気まずい空気に耐えかねたサクラは、ナルトのミイラ男のような包帯姿を茶化しながら病室のカーテンを開けた。

「俺約束は絶対守ってばよ!一生の約束だって言ったからな!」
「……いいのよ、ナルト。もう……」

これだけ傷だらけになって戦ったナルト達にもう鞭は打てない。サクラだってサスケが帰ってこなかったショックはあるが、ナルトに気を遣ってそう言うしかなかった。

でもナルトはそれを良しとはしない。

「言ったからな。俺……」

「まっすぐ自分の言葉は曲げねェ。それが俺の忍道だからよ……」

ナルトは決してサスケを諦めていなかった。
ニシシと笑うナルトに勇気づけられ、サクラは「今度は私も一緒に」と声をかけた。
今度はナルトを頼り切りにせず、自分の力でサスケを取り戻すのだと誓ってサクラは病室を出ていった。


それから暫く綱手の問診があってから、サキは綱手、シカマルとともに退室した。
サキが心配するより、ナルトの精神は前向きだった。
良かった、と胸を撫で下ろして自宅へと戻った。


夕方、自来也がナルトの病室を訪れた。
師匠としてサスケを追う事を諦めろと言ったもののナルトの信念は折れず、逆にナルトの真っ直ぐさに自来也の方が折れてナルトを修行の旅に誘った。


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