走りながらも出会う生徒が口々に言っていることが耳に入ってくる。
俺だって、走りたくて走ってるわけじゃない。
あいつらがタンポポを持って追いかけてくるから…!!
一人一人にそう釈明しながら走りたいが、そんな余裕はない。
あいつら、昔と同じで足が速い。いや、さらに速くなっている。

足がもつれそうになりながらも、なんとか校庭までたどり着いた。
でももうダメだ。走れない。
なんであいつらこんなに執拗に追ってくるんだ。

疲れ果てた俺は、校庭にある木の木陰にそっと腰を下ろし寄り添う。
汗でべとついた制服をとは反対に、ひんやりとした木肌が上気した俺の肌に心地いい。

「セイちゃん、やっと捕まえた!」

「オマエよお、なんで逃げる必要があるんだ。つい追いかけちまったじゃねえか。」

俺を見下ろし、しれっとおかしなことを言い放つ琥一と琉夏。
誰が俺を逃げ出させた原因になってると思ってるんだ。
それになんで…あんなに走ったっていうのにこいつら息一つ乱してないんだ。
俺なんて呼吸するのさえ苦しいっていうのに。
化け物か。

呼吸することさえままならない俺は、最後の手段で二人を見上げ睨んだ。

琥一と琉夏はそれに臆することもなくニヤニヤと俺を見下ろし続ける。

「あ、そうだ!ねえセイちゃん、これ懐かしくない?綿毛いっぱいのタンポポ。息吹きかけてみよっか?」

「おお、そうだな、ルカ。盛大に綿毛飛ばしてみろ。」

俺にタンポポを向け、思いっきり息を吸う琉夏。
はやし立てる琥一。








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