あいつらが入学してくるまで吹奏楽の練習がない日を狙って行っていた音楽室にも、あいつらがいつ嗅ぎつけてやってくるのか不安で行くのを止めていた。

それから2週間経ち1か月経ち…
あいつらは俺の前に姿を現すことはなかった。

あいつら、どうやら俺がはば学にいるってこと知らないようだな。
それに気を良くした俺は、ピアノを弾くことを再開した。

それがいけなかった。そのなんの確信もなかったほんの少しの油断が。
今の俺に、小さい頃の教訓が生かされることはなかった。


「さて、と。今日は何から弾こうか。」

久しぶりの音楽室。久しぶりのピアノの感触をしばらく確かめて椅子に座る俺。
あいつらが俺がここにいることを知らなかったんだということからくる安堵感。
そのことがいつもより俺を高揚させていて、音楽室のドアが開く音に気付かなかった。


「よお、久しぶりだなセイちゃんよお。何弾くんだ?」

「久しぶりだね、セイちゃん。探したよ?」

なんだ、このドスの効いた声。続いて聞こえた甘ったるい声。
そんな知り合いは…は?セ、セイちゃん…?
この呼び方をするのはあいつらしかいない。

恐る恐るドアの方へ身体を向ける。
15歳とは思えない立派な体躯をドアに預け、不敵な笑みを浮かべながら俺を見ている黒髪と金髪の二人組。
出来れば二度と顔を拝みたくないと思っていた二人組。








- 2/7 -

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐


top