月花に謳う



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「これからはなるべく二人で行動して欲しい。一人で行動するときや五月女に絡まれたときは俺が対応することになってる。俺が対応できなくても、他の風紀で手が空いているやつが代わりに対応する。」

「厳重だね」

「それだけじゃないぞ。親衛隊にも応援要請してあるから、お前らに何かあれば親衛隊にも連絡が回るし、連絡係にもなる」

「親衛隊からの危害を防ぐための護衛なのに、親衛隊も協力するなんてちょっと可笑しくないか?」

「まあ普通はそうだよなあ。俺も聞いた時は耳を疑ったけど、総括の口から直接聞いたし、間違いないさ」


 総括、それは間違いなく彼。それを知り、心臓が小さく跳ねた。


「香ちゃんが?」

「……話には聞いてたけど、霜野って本当に親衛隊と親しいんだな…。」


 松坂の言葉に思わず聞き返してしまい、香ちゃんの名前を出してしまった。別に親衛隊と関わりがあるのを隠しているわけではないけれど、一般生徒である俺が親衛隊員と親密だというのはコレクションの子以外の親衛隊員にもいい印象ではないと思っていたし、俺が愛でているコレクションの子にはなまじ地位の高い子が多いから、関わりがあると知れるとお互いに面倒になると考えていたのもある。親衛隊幹部であることや華人の地位を持つ彼らが特権階級の生徒に従っているなど、この学校ではあまり良く思われないだろうし。更に言えば、現状で親衛隊が殺気立っているのにその対象と仲良くしているなど、俺に嫌がらせをしている連中からすれば邪魔者以外になく、余計に排除しようと動くのは目に見えているようなものだ。


「悠璃、ちゃんづけで呼んでるのか……」

「あはは…」


 松坂の感心したような様子と冬吾の脱力した様子に曖昧に声を漏らすしかない。なんとなくその視線に居心地が悪くなり視線を逸らしてしまう。


「まあ、そんなわけで親衛隊の方は総隊長の方が取り仕切ってるから詳しいことは分からないんだが、連携をとることになってる。まあこんな話、聞いたことないから初めてじゃないか?」

「悠璃って不思議だよなあ」


 なんか冬吾からの視線が奇妙なものを見るような目をしてるんだけど。俺、別に悪いとこしてないからそんな目で見るの止めてくれる?




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