柘榴石:呼び出し
それから数日後のことだった。翡翠は親衛隊に呼び出されることになる。
放課後のすこしざわつく教室。
「ねえ、御影くん。ちょっと話したいことがあるんだけど、ついてきてくれる」
帰る支度をしている最中、頭上から降って来た声に顔を上げた。そこには三人の生徒。どちらかというと細身で愛らしい感じの子たち。
たぶん、琥珀の親衛隊なんだろう。まさかクラスメイトや同級生から声がかかるなんて思ってなかった。しかもこんなに人がいる放課後に堂々と。あまり話したことはないが同じ学年だから顔くらいは知っている仲だ。今まで琥珀の親衛隊なんて大して意識していなかったが、顔を合わせて改めてこんなに身近にいたのだと背筋がうすら寒くなる。
こちらを睨みつけるように、僕の机を三人で取り囲み退路を断っている。なんて質の悪い。
ふと先日交わした白い悪魔こと風紀副委員長との会話が思い出される。未然には防げないけどピンチは助ける、ね。本当かどうかは分からないけど、ここでついて行っても絶望的な状況ではないはずだ。それに今日は琥珀を生徒会室に迎えに行く約束もある。
ちいさく息を吐き出し、無言で立ち会があると彼らはついて来い、というようにこちらを一瞥して僕が逃げられないように囲い込んだまま目的地へと進み始めた。まるで警察に護送される犯罪者のようで可笑しくて微かに笑ってしまう。
このとき僕はついて行くべきではなかったんだ。もしついて行ってなかったらどうなっていたんだろう。