柘榴石:確信犯
その日の夕飯時。琥珀の部屋で向かいあって夕飯を食べながら昼間にあった風紀副委員長のことを話してみる。
「そう、サイが。まあ協力してくれるのは有難いけど…」
なに企んでるんだか、と琥珀は呆れたように首を振って息を吐いた。確かに何を考えているか分からないひとだった。
「ほんとに知り合いだったんだ…」
「まあ、性が似てるから自然とね。それより翡翠、何もされなかった?」
「それは大丈夫なんだけど。そっちより、あの人、僕たちのこと知ってるみたいだよ?」
「言いふらすようなやつじゃないから大丈夫だと思うけど、俺の方からも明日釘を刺しておくよ。あと、翡翠」
「なあに?」
「この前も言ったけど、親衛隊になにかされてない?もしくは俺に黙ってることはない?」
「この前ちゃんと白状したよ?」
「それだけじゃないでしょ。これくらいなら、って言ってないこと……あるんじゃない?」
本当に何もかもお見通しだった。
「えっと、あの」
「いいよ、今はゆっくり夕飯を食べて。お風呂に入って全部終わったら、俺が白状させてあげるから」
「う」
つまり、快楽で理性がゆるくなったところを白状させたい、と。
琥珀に触れられるなら何だっていいし、その口実が今まで黙ってきたことを吐き出すというのだって別にいいんだけど。いいんだけど…。
目の前で綺麗な箸使いで食事をする琥珀を見つめる。見つめられたことに気付いた琥珀は艶然と綺麗に微笑んだ。確信犯だ。
「なに、翡翠」
「ばか」
「ふふっ」
絶対じらすつもりなんだ、琥珀。それに今からそのときまでそのことだけを考えて過ごせってことだ。琥珀に愛撫されるために食事を終えて、お風呂で身体を磨いて。歯を磨くときだって絶対に口づけを意識することになる。
本当に羞恥心どころの話じゃない。じわじわと顔に広がった熱が指先まで伝わって、身体の中心に熱を灯す。
「楽しみだね、翡翠」
楽しみで堪らないよ、と笑う琥珀を恨めし気に睨みつつ、残りのおかずに箸をのばした。