「痛っ…」
 仰向けに倒れた丸井の、太腿の上に馬乗りになる。強い衝撃で頭をぶつけたらしく、涙目になっていた。自分のネクタイを首から引き抜くと、丸井の両腕をまとめて手首で縛り、俺の首に掛けて動きを封じた。
「何すんだよ、バカ、放せよ!」
 体をずらし、膝で太股を押さえながら丸井の脚を広げさせ、その間に入った。動こうと暴れる丸井の首元を右手で掴み、地面に押しつけながら左手はベルトのバックルへと進める。手早く留め金を外して、ベルトを引き抜く。ホックを外し、ジッパーを下げ、前を寛げると灰色のボクサーパンツが覗いた。
「ほ、ほんとになにしてんの、やめろよ」
 右手に少し力が入りすぎたのか、丸井は苦しそうに言った。尚も暴れるが、手などは震えていた。片方の足からズボンを引き抜いて、もう片方は膝まで摺り下げると、素肌を晒すようになった太腿をさらに広げるように膝で押した。丸井のネクタイも外して、ワイシャツはボタンを弾くくらい強引に開けた。
「やぁ、やだぁ!幸村くん、ゆきむらくんっ、助けてたすけて」
 硬くて平らな胸を撫でる。拒絶するように鳥肌が立った。丸井は発作を起こしたように、幸村に助けを求めて喚く。そんな風にしてもきっと幸村は来ないのに、何故名前を呼ぶのか。目の前にいるのは俺なのに。そんな理不尽な怒りが湧いてきて、先ほど床に投げた丸井のネクタイを取って丸めると、煩い口に無理やり詰めた。喚きはくぐもった声になった。涎が頬を伝って流れた。いつの間にか涙も溢れている。汗も鼻水も出て、あらゆる水分でぐしゃぐしゃになった顔は汚らしいのに、俺には美しく扇情的に見えて、欲情を誘った。
 しまった、ネクタイを詰めてしまったらキスが出来ないじゃないか。きっと暖かくて甘いだろうその口の中を蹂躙してやればよかった。しかし、塞がなければ未だに煩わしく幸村の名前を呼んでいただろう。仕方がないと、首に回した腕を掴んで、その首元に唇を寄せた。強めに吸いつき、時々甘噛みして、痕を付ける。それは白い肌に紅く残って、俺の心を少しだけ満たした。幸村は痕を付けていないようだった。それは丸井が望まなかったからかもしれない。そう思うと気分がよかった。
 一頻り付け終わっても、丸井は相変わらず助けを求めているのだろう、煩く喚いて、その声が癪に障った。頬を平手で打ってやると、低く呻いてから黙った。抵抗する気力がなくなったように、体をだらりと脱力させる。目は開いているが、瞳の色は虚ろだ。涙は流れ続け、顔が傾いた方に水たまりを作りそうだった。

 パンツの中に手を忍ばせて、丸井のを軽く扱いてみるが、それは項垂れたまま、頭を上げる気配はない。恐怖や嫌悪で、立たないのだろうか。なら、それでいい。丸井のから手を離し、パンツを摺り下げて下半身を外気に晒した。丸井はそれに反応して、また声を上げ暴れた。黙らせるにはどうすればいいか逡巡して、結局拳を握って鳩尾を殴った。丸井の体は一瞬、くの字に曲がった。また低く呻く。全身が震えていた。鼻に掛かった、すすり泣いているような声が聞こえる。目をきつく閉じて泣いている様は、庇護欲を掻き立てる。胸がざわついた。

 指を唾液で濡らすと、後ろに滑らせた。中指を無理に差し込む。抵抗はあったが思ったよりも素直に入った。何故かと考えて、思い当たったのは、今日は珍しく部活がない日だということ。昨日あったであろう情事を思い浮かべると、腹が立ち、同時に興奮した。良い所を探したりはせず、自分が入るために穴を広げる。徐々に指を増やして乱暴に掻き混ぜて、ある程度弛んだところで、指を抜いた。
 さっきから丸井は死んだように静かだ。マグロを抱いても面白くはないが、状況に興奮してか俺のはちゃんと立ち上がっていた。入口に宛がうと、一気に貫いた。
「んぐぅっ」
 抵抗も省みず挿入したので、少し切れたかもしれない。中は熱くて、異物を吐き出そうとする動きが、逆に飲み込もうと絡みついているように感じる。狭くて、痛いくらいに気持ちがいい。夢中で穿った。
「ぐぅっ…んっんんっ…」
 俺が奥を突いて犯す度、丸井は苦しげに喘ぐ。遮られていなかったらどんな声を上げているのだろうか。口に詰めたネクタイを外してやる。丸井の口の中に溜まっていた涎が垂れた。

「あ゛ぁっんあっあっ…」
 けして綺麗ではないし、感じてもないけれど、丸井が俺の下で嬌声を上げていると思うと俺の中心に熱を注ぐ。
 さらに穿つ速度を上げて、そして爆ぜた。

 俺のを抜くと、中に出した血の混じった白濁がドロリと床に垂れた。丸井の体はぐったりとしている。白濁で汚れるのを厭わず、丸井のボクサーパンツとズボンを上げ、ワイシャツはボタンを掛けず前を合わせるだけにした。胴体を隠すようにブレザーを掛けてやる。それから自分の身なりを整えた。手首のネクタイを外してやろうと手を掛けたとき、左手の薬指の光モノに気付いた。細くて存在感の薄い銀のリング。触ると、ぐったりとしていた丸井が反応した。怪訝に顔を歪め、俺を睨み付けてくる。
 まだそんな気力があったのかと、感心する。成程。無意識に唇の端を吊り上げていた。強く握った手を無理やり開かせ、指からそれを引き抜く。
「ゃめろぉっ…」
 丸井は制止する声を上げたが、枯れた声に覇気はなかった。リングを握った手を振り上げると、教室の後方へ投げた。それは放物線を描いて、ゴミ箱に吸い込まれていった。
「あ…」
 丸井は声を失くし、また静かに泣き始めた。俺は丸井をそのままに放置して、教室を出た。


 丸井の中に入った瞬間、何かが満たされた気がした。
 けれど、今の俺の心は空虚だ。
 幸村のしるしを投げ捨てた時の丸井の悲しげな顔が、頭から離れない。





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