『いっしょーのお願いです。私をししょーに乗せてください。』
「ヤダ」
『そんな!一瞬で断るなんて!』
「ししょーには誰にも乗せないって決めてんの。」
『でも!ウォルターパークで子どもたちと遊ぶ時乗せてたじゃん!』
「子供と張り合うなよ。しかもあれも無理やりだったし。」
『おーねーがーいー』
はあ、うるさいみたいな顔をしてる。
でも知ってるんだ。こうやって押せばアガレスくんは色々面倒になって、最後には聞いてくれるって事。
強引だけど、一番効果的な方法。ごめんね。
「ちょっとだけだぞ」
ほら!やっぱり!優しいなぁ。
『おじゃましまーす。わあー…ふわふわ…』
ししょーはどうぞどうぞと迎え入れてくれた。ちょっと浮いて、上からゆっくりダイブする。
ぽふんっと着地すると、予想してた以上のもこもこに包まれて幸せな気持ちになった。
アガレスくんはいつもこんなふわふわの上で過ごしてるんだ。ずっと眠くなっちゃう気持ち、分かる。
『なんだか眠くなってきた』
「おい絶対寝るなよ」
『おやすみ…』
「ちょっと!」
こいつ、マジか。みたいな顔をしていたアガレスくん。
しょうがないじゃないか。こんなにフワフワなんだから。
宣言した通り眼を閉じて寝る体制になる。
でも、うとうとしていたのはホントだけど、まだ意識はある。
ほんとは、ちょっとでも多くアガレスくんの隣に居たかっただけだ。
はー…とため息が聞こえた後、しばしの沈黙。
追い出したりしないんだ。やっぱり優しいな。ごめんね、こんな関わり方しかできなくて。
私はキミが好きなんだ。
そうして数分経った後、静かすぎる空間にアガレスくんも眠ったのかなぁと考えてた時
顔にかかってる髪の毛を直してくれる感触があった。驚きとむず痒さで飛び起きそうだったけど我慢した。
そして信じられないことに、私の頭を撫でてきた。まるで子供にしてくれるような優しい手付きで。
え、嘘、ほんとに?アガレスくんが?
こっそり薄目を開けてアガレスくんの顔を見る。
どうかどうか、バレませんように。
そこには、アイマスクを外してこっちを見ているアガレスくんが居て、
その顔が、想像してなかったぐらい優しい顔で見つめてるものだからびっくりした。
一気にぶわぁーって、顔が熱くなる。
「ねえ、顔真っ赤なんだけど。
絶対起きてるでしょ。」
その言葉にさらに恥ずかしさがヒートアップして。
でも今更起きてます!なんても言えなくて。
もう少しこの空間も楽しみたくて、必死で寝てるふりを続けた。