星の子の見学会レポート―その日は、星の国に居る数人の星の子たちを集め、星の精の仕事の見学会が行われていた。
<以下、星の子たちのレポートより>
・午前9時半
本来9時に召集をかけたらしいけど、宮殿内の会議用の広間に集まっているのはネールさまとハールさまのみ。
皆さん何かあったのでしょうか…?
人数分の飲み物を用意するネールさまの後ろ姿から底知れぬ怒りのオーラを感じます。
by とある星の子
・午前10時
ようやく星の精さま全員集合。
やっと会議が始まったと思いきや、チョールさまの提案で「たたいてかぶってじゃんけんぽん大会」開催。
何でも倉庫の中からおもちゃのヘルメットとピコピコハンマーを見つけてしまったらしい。(なんでそんなものがあるんだろう…)
マールさまとニールさまがおおはしゃぎする横でネールさまとダールさまは盛大にため息をついておられました。
by とある星の子 その2
・午前10時半
マールさまが非常に眠そうです。
まだちゃんとした会議が始まって3分ほどしか経っていないはずですが…。
(ちなみにたたいてかぶってじゃんけんぽん大会はネールさまの優勝でした)
by じゃんけんはチョキ派の星の子
・午前11時
マールさまご就寝。
特に誰も何も言うことなく会議は進行。
ハールさまは積極的に発言しておりましたが、その度にテールさまはハールさまの意見をぶったぎっていました。
by なんだか自分も眠くなってきた星の子
・午前11時半
マールさまに続きニールさまご就寝。
…が、しかし、すぐさまネールさまに叩き起こされていました。
「叩かなくてもいいじゃん…」
と言うニールさまに、
「次寝たらその帽子にヒトデを詰め込みます」
とネールさまはニールさまの方を見ることもなく言い放ちました。
「どんな嫌がらせ!?」
と言いつつニールさまは完全に目が覚めたようでした。
by ネールさまに起こされたい星の子
・午後12時
ニールさまが星の子たちからの願い星を回収。
ダールさまは「願いがごみのようだ…」とぼやいておりました。
by ジ〇リ大好き星の子
・午後12時半
第2回じゃんけんぽん大会を提案するチョールさま。さすがに2回目ともなると皆さん乗り気じゃないようでしたが、そこは星の精最年長としての権限をふりかざし大会開催を押し通しました。
by さすがに2回目はくどい…見学する方としてもキツイ…な星の子
・午後1時
作業を再会しチョールさまがいの一番におっしゃった「なんだか今日は作業の進みが遅いのう…星の子らが来てるからと言って皆浮かれているのではないか…?」という発言に対しダァンッ!!とネールさまが1発机を無言で叩きました。
チョールさまはしばらく言葉を発しなくなりました。
他の星の精さまも黙りました。
僕らも一切のお喋りをやめました。
by さっきまで後ろの子と背中に書いた文字はなんでしょうゲームをしていた星の子
・午後2時半
まだまだ願いの仕分けはおわらないようです。
マールさまはとても楽しそうに届けられた願いを聞いていきますが、その他の星の精さまは疲れてきているみたいです。
場の雰囲気を和ませようとハールさまが口を開きました。
「いや〜〜この間スーパーに行ってね、イクラを買おうと思ったんだけど値段がわからなくてね。だから店員さんに聞いたんだけれどね。これ…」
「ハール、もうそこまでにしておけ」
ダールさまの優しさを感じました。
でももっと早く止めてあげるべきだったと思います。
by くだらないオヤジギャグは聞きたくない星の子
・午後3時
マールさまが飲み物とお茶菓子を用意してくださいました。星の精さまたちにはコーヒーを、テールさまと僕らにはココアを持って。
「何でぼくまでココアなのさ」
「えぇ?だってテールは子どもじゃない」
マールさまに言われてテールさまは少し不満げだったけど、なんだか照れてるようにも見えました。
by ココアとマールさま大好き星の子
・午後4時
再びうとうとし出すニールさま。
すぐさまネールさまに注意されるかと思いきや、
「…少し別室で仮眠してきたらどうですか?夕べも遅くまで仕事していたんでしょう?」
というネールさまの言葉にニールさまも目を丸くしていました。
「それ、ネールもでしょ」
とニールさまは笑ってからまた作業し始めました。
by ニールさまとネールさまの今後の展開に期待したい星の子
・午後4時半
ダールさまは手に取った赤い願い星を懐かしそうに見つめておられました。
「なかなか貴重な体験だったな」
と話しかけたハールさまに、
「ああ。でも2度とごめんだな」
とダールさまは返しました。
赤い願い星には、『お仕事お疲れさん』という願いとは到底思えない言葉が託されていました。
by 赤い願い星は誰のものだったのか気になる星の子
・午後5時
まだまだ星の精さまの仕事は終わりませんが、僕らはそろそろ退場することにしました。
帰ろうとした僕らをチョールさまが直々に見送ってくださいました。
帰り際、「ありがとうございました」と頭を下げるぼくたちにチョールさまこう言いました。
「お礼を言うのはこちらの方じゃ。星の子らよ。いつも願いを届けてくれてありがとう。ワシらにはお前たちの力が必要じゃ。どうかこれからも力を貸して欲しい」
丁寧に頭を下げるチョールさま。
最後に、チョールさまはこっそりぼくにだけ話してくれました。
「こんなこと他の者には言えんがの。お前には特に期待しているぞ」
―そこまで書いたところで、『彼』は手を止めた。
「あ…っと。最後のは消さなきゃだな」
たった今書いた文字を消し、新たに文字を綴る。
『やっぱり星の精さまはぼくらの憧れの星だと思いました。
―ティンク』
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