自分でリモコンのボタンを押してクーラーを止めようと思ったが、リモコンはソファーの隙間に入り込んでいて赤外線が届かない。
リモコンのボタンを連打というちっちゃいポルターガイスト現象を連発したが、頼りの赤外線はソファーの中へと消えていく。クーラーに司令を送るという本来の役目を果たせていない。
「そんな隙間に入れるなよぉおお!!」
もう泣いた。
真木には見えないだろうが、今はクーラーの上の吸い口に人の上半身がある図になっている。足はどこに行ったか分からない。スプラッタな現状は、幽霊の俺まで怖いと思う。
で、俺の必死な祈りが通じたのか、真木は立ち上がる。こいつが立ち上がっても何もできないと思うし、それよりもリモコンをクーラーの本体が反応できる場所に置いてほしい。切実に。
真木が手に取ったのは、
「リ、セッチュ…」
シュシュッとするタイプの消臭剤。
因みにパッケージで分かる。俺があの会社の中で唯一苦手なタイプのフローラルの香り。
それを持ってクーラーの前に来た真木は俺が大嫌いな香りを噴出する消臭剤を、なんと俺に向けやがったのだ。ここでもムカつくのだが、高身長の優勢が本気ですさまじかった。
俺ならリセッチュを構えたところで、絶対にクーラーまで届かないと思う。
「クーラーの匂いが気になるならリセッチュじゃなくて中身を洗えよ、んの野郎!!」
トリガー部分にかかる真木の指。そして、
しゅっ。
「ぎぃやぁああ!!俺この香りマジで無理なんだって!!他の香りかファブたんにしろよ、至近距離で噴出すんじゃねぇえええ!!」
しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ。
叫びも虚しく、リセッチュ攻撃が連発される。しかも、俺の気のせいじゃなければ空気を吐き出す方じゃなくて、俺の顔面に向かって噴出されている。俺が逃げればリセッチュも動く。
俺は銃を向けられた感じで必死に逃げているのに、真木はデニムのぽっけにもう片手を突っ込み、ラフな立ち方をしていた。
しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ。
「なんの恨みだよぉおおお!!」
「リセッチュとかファブたんとか、除霊に効くって言うじゃん?だから試してみようって」
「俺その香りだけは無理!!」
「あぁ、よかった」
「人に向けちゃダメなの、常識!!」
そこまで言ってハッとした。
だが、驚きで固まる俺を見上げながら、いや、心境的には俺が見下されているのだが、真木はリセッチュの照準を俺の額に合わせ、ラスボスも真っ青なあくどい笑みを浮かべた。
「大丈夫、お前は人じゃねぇだろ?」
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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。