20.
つまり、
(俺とこいつ、…コウは真剣勝負をしていたんじゃなくて俺が一方的に譲られてただけじゃねぇか)
まるで子供相手でゲームをするように、わざと負けたことを悟らせずに負ける。
しかも、コウが勝ったとしても結果は俺が勝った場合と同じく、ボトルは強要されないし、俺はコウに何か要求を言える。
(…ここまで来たらいっそ清々しい)
仕事で嫌なことがあったのか、と最初にそう聞かれた。俺は誤魔化せたと思っていたが、本当は誤魔化されたふりをしてくれたんだ。
それで、ずっと慰めようとしてくれた。
ポーカーで俺にかっこよく勝たせてスッキリさせようとしてくれて、見破られたと知った後もずっと俺に気を遣っていた。
(完敗だ、)
手加減されて悔しいとは思わない。
むしろ逆にスッキリした。
(こいつになら、ターゲット取られて当たり前かもしれねぇな。かなわねぇ)
色香だけでどうこうするのではなく、気を遣っていることを悟らせずに優しくする。温かい優しさが胸に染み込んだ。心地いい優しさだ。
コウには勝てない。そう感じた。
相手の心を読むのも、相手の心を奪うのも、ポーカーも実質は負けた。言い訳すら見付からないほどの綺麗な完敗だったんだ。
そして、ポーカーの賭け金に心なんてものを追加した覚えはないのに、心臓がさっきからドクドクと煩い。誰かに奪われてしまったように自分の鼓動のペースを失い、甘くて切ない鼓動を打つ。
認める。
(コウに、…惚れた)
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