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15.


「…負けた」

ハイカードである俺に対し、奴のハンドはダイアの2、クラブの2、ハートの9、クラブの7、スペードの6だ。ワンペア。俺の負けだ。

妙にホッとした。悔しがるだろうか、とそいつを見たが、予想に反して嬉しそうにしていた。

「勝ったぁ!」

「お前、負けてぇんじゃなかったのかよ?」

「はっ、馬鹿じゃないのか」

「……え?」

思わず固まってしまった。

「すぐに騙されるひよっこめ」

不敵な笑みとその言葉にやっと頭が回った。

罠だったのだ、最初から。

奴は確かにシャッフルに詳しく、ディールシャッフルの特性についても知っていた。だが、ディールシャッフルやリフルシャッフルならまだしも、そこらのホストがパーフェクトシャッフルを完璧に行えるとは考えにくい。

つまり、実際は技術不足でストレートフラッシュを仕込めなかったが、それが現れる手順にそってシャッフルすることによって、俺にストレートフラッシュが存在していると思い込ませた。

ストレートフラッシュは存在しなかったんだ。

もし、上手く俺に思い込ませることができれば、先程の俺のように奴は自分が負けようとしていると読む。そして、もう一枚裏を読み、負けることで奴は得をすると思い込み、奴が負けることを必死に阻止するだろう。

つまり、俺は自らハンドを弱くする。

そして、万一、俺がストレートフラッシュに気付かず、カードを配る時に奇数枚を大人しく受け取っていた場合、その5枚は本物のストレートフラッシュではないから驚異にもならない。

俺を思い込ませることに成功すると、奴がハンドを強くすると同時に俺は自らハンドを弱くしているわけだから、奴の勝率が跳ね上がる。

最初に俺からカードを配ろうとしたのも、ストレートフラッシュに見立てた偽物のハンドを5枚とも捨てたのも、俺に勝たせようとしていると嘘をつくための演技だった。

誘導だったんだ。

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