三人目の疑惑
あれから一週間が過ぎた。
だが、特に進展はなかった。
蓮によると、あの後すぐに受験者達は尋斗の情報を探ろうとした。もちろん、こちらは予測済みで、あらかじめある程度強固なセキリュティにした。
といっても彼らが破れない程のものではなく、散々苦労させて開かせてから、適度に真実を交えた嘘をトラップとして与えた。
尋斗はマッド・フォックスであること。
どこの組織に入っているとか、誰と手を組んでいるとか、そんな嘘がひしめくページの中でこれだけは本物の情報だ。何よりも目を引くだろう。
残り三週間。こちらには進展がない。そして、あちらにはもっと進展がないだろう。
そんな中で現れた格上の情報屋の存在は、警戒を高めると同時にじわじわと彼らを焦らせる。計画に綻びが生じ、扱いやすくなるのだ。
だが、そう言う俺も少し焦っている。
最後の三人目が全く気配を現さないのだ。
任務遂行において、パソコンなどの機械を使った情報争奪戦も大事だが、潜入して直接ターゲットに接触することの意味も大きい。
なのに、俺は最後の一人が誰か分からない。この一週間のうちにも面接に来る人はいたが、そのどれも同業者の雰囲気じゃない。
最後の一人は必ず俺に接触している。
だが、どうしても見当がつかなかった。
そして、俺はそれがこの男である可能性が高いと思っている。証拠なんてものはない。何が俺にそう思わせているのか。…それはただ単純に、同業者を嗅ぎ分ける勘や本能の類だった。
「もっとこっちに来い、コウ」
この男、清宮慧が。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。