13.※
「激し、…ァ、慧…!ク、…ぁあ!」
「わりぃ、ちょっと…付き合え、ッ、」
激しく獣のように揺さぶられる。
車の中で抱かれた時も、慧に跨った時も、腰を動かしにくい体勢だとは知っていたが、まさか俺が下になるこの体勢になってこんなにも激しく抱かれるとは思ってもいなかった。
体全体を揺さぶる衝撃に泣きそうで、なのに、正確に与えられる快感に口を開けば嬌声ばかり。声を我慢しようにも鼻での呼吸じゃ酸素が足らなくて、口を開けば喘がされる。
もう慧にすがりつくしかできなくて、その首に腕を回して抱き寄せた。その途端に鋭い光を浮かべていた目が、ふっ、と緩む。
本当に快感に殺されてしまいそうだ。
「コウ…、っ、好きだ、愛してる、」
返事ができない時に言うのは反則だと思う。
だが、返事代わりに慧の首に回していた手で震えながらその柔らかい髪を撫でてやれば、幸せそうに頬が緩んでいった。それはあの日に見た慧の素の微笑みで、もちろん、切なさや罪悪感なんてものが存在するはずもなかった。
互いに素の部分をさらけ出しながら、幸せを共有する。これ以上に幸せなことはないだろう。
快感に呑まれながらも微笑んでしまったことに、きっと慧は気付いていたと思う。ちゅ、と鎖骨に触れた唇は、今までで一番優しかった。
「ッはぁ、ん、っ!!」
「…、ぅ、」
ほぼ同じタイミングでイッてしまったことに、また同じタイミングで笑ってしまった。
俺を見下ろす瞳は穏やかで、優しくて、温かくて、頭を撫でてくれる手に込められた愛情の深さを俺は身をもって知っている。何も言わずに共に余韻に浸るだけで、共に時間を過ごすだけで、心は通いあっているのが分かる。
手に触れるだけで指を絡めて握り返してくれた慧に、言葉は必要ないと知った。
たぶん、言葉にしなくてもお互いの胸を占めている感情は同じだろうから。
今この瞬間も、そして、未来も、ずっと。
(act.5 言葉の裏の裏 終)
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。