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11.


二日目の試合を終えて宿屋に帰ってきてから、イチルの表情は険しいままだ。

三日目進出へのプレートを手に入れたはいいものの、嬉しそうにもせずにずっと俺を眺める。眺めるだけじゃなくて翼を上げさせたり、嘴を開いたり何かを調べるから意味が分からない。

『な、何?』

「どうして攻撃魔法を使える?」

『あれはそんなもんじゃないでしょ』

「いや、間違いない。攻撃魔法だ。…攻撃魔法はCランク以上にしか存在しない。聖獣でも少なくてCランクじゃないと攻撃や防御みてぇな戦闘用の魔法を使えるわけねぇんだよ」

確かにイチルの言うとおりかもしれない。

花も、雌鶏も、山羊も、魔法らしい魔法は使ってこなかった。四試合目で初めて出てきた攻撃用の炎。それを使ったピンク色の猫は、自分はCランクだ、とはっきり言っていた。

「何かの雛ってわけじゃねぇんだよな?親は?」

『たぶん。…覚えてない』

違う世界から来たんだから、鳥の両親なんていない。元の世界だって孤児院からもらってきたとしか聞いていないから、両親が誰かも分からない。

だが、俺にとっては別に気にしない話題でも、イチルは不味いことを聞いてしまったと思っているらしい。…まったく、普段は人でなしに近いのに変なところで優しい。

『成長してきてるって思わない?』

だから、話題を変えた。

「確かにデカくなってきてるような…。アホ毛も立ったまんまだし…、」

『これ、飾り羽じゃない?』

寝癖だと思っていたそれは、思いの他しっかりしているらしい。他にも変化はないかと体のあちこちを見回せば、尾羽が伸びていることに気が付いた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。