※イチルside
ユニコーンの視線が突き刺さる。
言いたいことはちゃんと分かっている。
(堕ちかけか、堕ちたか…)
魔獣化。
光と闇は、その他四属性に影響を与えない。例えばタクと契約した時ユニコーンが風に関与されなかったように、ラニアで魔獣に会った時タクの風が魔獣を殺せなかったように、光と闇はその他四属性に傷付けられることはない。
聖獣ならばありえること。だが、逆に言えば人間の身でそうなってしまった俺は、確実に体内で何か変化が起きているだろう。
それも悪い変化が。
「わぁってるよ。光属性のお前から見たら、今の俺は相当気持ち悪ぃんだろ?」
闇の侵食。
それもついに他の属性を感じないところまで来た。頬を撫でる風も、そこに混じる熱さも何も感じなくなった。きっと、この先タクに触れても優しい体温を感じることはできないだろう。
「まだ助かるか?」
生きたい。それが正直な願い。
一度は死を覚悟した。居場所のない俺がタクの腕の中で最期を迎えられたら、と。
だが、諦めることはやめた。だって、あんなに必死に戦っているタクを見て俺が諦めることはできなくなったし、共に生きていきたいと強く、強く、魂の底から強く願ったんだ。
今日も、明日も、明後日も、その先も。
だが、ユニコーンは俺から目を逸らした。
「…そうか」
それだけしか返せなかった。
まぁ、ずっと前から覚悟はしていた。
だが、
「悔しいな。…ちっくしょうッ!!」
悔しくて、悔しくてたまらない。
愛する人が俺を助けるために命を張って戦っているのにその思いに応えられないことが、共に朝日を見れないことがこんなにも悔しくて、強く握りしめすぎた拳が、ズキ、と鋭く痛んだ。
[ 492/656 ]
prev /
next
[
mokuji /
bookmark /
main /
top ]
王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。