あれからどれくらいの時間と労力をかけて誤解を解いたんだろう。もう必死だった。
伝言の原形こそ言わなかったが、結婚も披露宴も誤報だと言えばカルナダ様がかなりがっかりしていた。それでも、イチルが恥ずかしげもなく俺を恋人だと宣言するから祝福ムードは回復。
因みに、雛も俺達の子とはしているが、血縁関係はないときちんとカルナダ様に伝えた。
血縁関係なんてなくても大事で可愛い俺達の子だと思っているし、イチルもなんだかんだ言って否定はしない。カルナダ様だって可愛いと言ってくれたし、おじさまと呼ばせてくれた。
結局、血の濃さなんて目に見えないものに左右されるほど簡単な感情でもなかった。
そして、ホーリエやオーツェルドはカルナダ様やドラゴンと身分を気にせずに良好な関係を築けていたし、ドラゴンの笑い上戸が発覚した途端に王の威厳なんてものは消え失せたらしい。
オーナーがまた来ない程度に盛り上がった。
で、昼ご飯も食べ終わって、昼下がりの穏やかな時間を皆が思い思いに楽しみ始める頃、俺はこっそりとドラゴンを呼び出した。
ドラゴンとカルナダ様に休んでほしいという思いもあったが、聖剣のことで一刻を争う今、と言っても他の人にバレないように配慮するだけの余裕はあるが、できるだけ早く相談したい。
だから、近くの林に来てもらうことにした。
『やぁ、待たせたね』
そう言って、黄金色の聖獣が枝に降りる。
目の前の枝にとまったドラゴンは一度優雅に翼を広げるとそれを折りたたみ、長い尾をしならせた。尻尾の先の大きめの飾り鱗が半ば日に透けるように、不確かに煌めいたように見えた。
「待ってないよ。思ったより早かった」
『ふふ、それにしても君があの王子様と…。いやぁ、まったく、本当におめでたいね』
「と言ってもカルナダ様ほど驚いてなかったでしょ?あの伝言信じてなかった?」
『伝言は信じてたけど、…あの雛がね。君達二人とも男同士なわけだし…、それに、あれは今は雛でも成長すれば雷属性のAランクさ』
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。