『ふっふふーん、ふっふふーん!』
あの時は機嫌が最高によかったんだ。
というのも、小鳥の方が持ち運びに便利だし、宿もイチルと一人部屋で済んで安いという理由でラニアを出てから俺はずっと小鳥の姿を強要された。
王という立場はともかくとして、大事な仲間相手に躊躇いなくこの仕打ちをするイチルはひどい。…せめて持ち運びじゃなくて移動って言ってほしかった。それで軽く拗ねた。
だが、宿で出された鶏肉のあぶり焼きが美味しくて満足したから機嫌もなおった。
小鳥の姿で鶏胸肉をがっつく俺に皆が呆然としている間に、イチルの分をペロリと平らげてやった。順調に肉食動物として進化しつつある。
断じて共食いじゃない。
『おっにくー、おっにくぅー、るんたった!』
こうして幸せなお腹の重みを感じなから、宿の裏で食後の散歩をしていた。
因みに、今はオリオンとノクトの最終決戦の地、西の最果てへと向かっている。シルフに助言をしてほしかったが、知らないらしい。
そして、聖剣の在処を知っていると肯定していた風の精霊達は、俺が再びその在処を聞くと揃って口を閉ざした。在処を知っているかと聞くと頷くのに、教えてほしいと頼むと反応を返さなくなるんだ。
季節は既に深秋も過ぎて冬となったが、昼下がりの陽射しは暖かさを残しているし、何より自家製のダウンコートがあるからぽかぽかと暖かい。お腹がいっぱいで、やることもなくて、ぽかぽかしている。眠くなる条件は見事に揃った。
だから、頭が回っていなかったんだ。
『んー?』
ふと地面に何か落ちているのを見付けた。
ピーナッツだ。俺も一応は人間だから地面に落ちているピーナッツを食べたいとは思わないが、ご丁寧に等間隔に落とされているそれが気になって仕方がない。不自然さ全開の等間隔だ。
だから、たどってみることにした。
ぴょん、ぴょん、と跳ねながらピーナッツに導かれていると、そう遠くない場所にピーナッツの山を見付けた。今までは一つずつ落ちていたのに、今度は山となって堂々と積まれていた。
[ 209/656 ]
prev /
next
[
mokuji /
bookmark /
main /
top ]
王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。