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8.

※ホーリエside

(いや、それはないよ)

現在はイチルの兄とドラゴンが契約しているけれど、歴史から見れば王が人と契約したケースなんて片手にすら満たないんだ。

しかも、どんな古い歴史書にだって記録されていない幻とも呼べる風の王が、魔力の欠片すらもない王子様と契約するとは思えない。

(考えすぎにも程があるよね、)

ふぅ、と溜め息を吐いて肩の力を抜いた。

「どうした、ホーリィ」

栗色の馬に乗っているオーツェルドが、心配そうに隻眼を細めたのが見えた。

「なんでもない。…ねぇ、昨日の夜、どうしてモチヅキが同行することに同意したの?まさか、本当に美人だからとかじゃないよね?」

前の二人に聞き取られない音量で言いながら軽くオーツェルドを睨めば、争うつもりはない、とでも言うように苦々しく笑いながら手綱から離した片手を上げて肩を竦めていた。

「下心なんかねぇよ。…ただ、」

オーツェルドの表情がふと真面目になった。

「あん時、マーメイドの狼狽え方が尋常じゃなかったんだよ。助け舟を出しくても出せねぇって感じで…。気付かなかったか?」

「…気付かなかった。どうして彼女が?」

「それは知らねぇ。お前が聞いてみたら?」

マーメイドが狼狽えていたなんて初耳だ。

彼女との付き合いだってかなり長い。もしモチヅキの正体を知っていて、しかも、それが何か危険なものだったら間違いなくマーメイドは教えてくれるはずだ。…いや、むしろ助け舟を出そうとしていたとは、どういうことか。

聞いて教えてくれるとは限らない。だが、それでも聞かなければならない。

「とりあえず、モチヅキには要注意だ」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。