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本来の姿


その時がやってきたのは、あまりに突然だった。

夕飯を食べ終えて休んでいた頃、窓から見えた星空があまりにも綺麗だったから、つい開け放たれた窓から外に出た。

濃紺の空に散りばめられたガラスのような無数の小さな星。前の世界ではなかなか見る機会がなかった。月が出ていなかったからこそ、その輝きがよりはっきりと見えた。

前の世界の空はこんなに綺麗じゃなかった。高校も家も大都市にあったんだから当たり前だと言えば当たり前だが、思えば、空が綺麗だったとしても俺には見る余裕がなかったのかもしれない。

この世界にも鈴虫はいるらしい。鈴虫の鳴き声しかしない星の綺麗な夜、宿屋の裏にある小さな林でのんびりと星空を眺めていた。

なのに、バキッと乗っていた木の枝が折れた。

「ッ、うわ、痛い、あー…!」

昔から反射神経は悪いわけじゃなくて、飛んだと思ったのに襲ってきたのは尻を地面に強打した痛み。あまりの痛みに涙目になりながら尻を押さえて、ハッと気が付いた。

「え、まさか、…人に戻ってる?」

嘘じゃない。人に戻っている。

尻を押さえる手も翼じゃなくて、足だってきちんとした人間の足だ。試しに頬を抓ってみれば痛いし、指も頬も存在していた。

小鳥じゃない。人間だ。しかも、着ている服は最後の日に着ていた高校の制服だ。

慌てて近くの小川に駆け寄って水鏡を見てみれば、そこには紛れもなく懐かしい高校の制服を着た人間がいた。だが、そこに映った自分自身の姿は、記憶とは大きく異なっていた。

「…なに、これ、」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。