囚ーtorikoー | ナノ
月明かりの下で。
ゆらりと、伸びる影法師。
その姿は先ほどまで完全に闇に溶け込んでいたが、背後にその淡い光を浴びて浮かび上がった。
部屋にいるナルトは巻物に夢中で、その時まで気づいていなかった。
ようやく。
「カ、カカシセンセーっ!」
自分の他の気配に気づいたナルトが背後を振り向くと驚いたように硬直する。
窓際にいつの間にかはたけカカシが立っていた。
「い、いつからそこにいたんだってばよ〜!?」
ナルトは驚いたように叫んだ。
カカシは、いつも用事がある時は玄関からではなく窓から訪ねてくる。
何度も注意をしたけれど、カカシが改めることはない。
そして中忍になってもナルトが忍びらしからぬ警戒心の無さで毎回、驚くのもいつものこと。
ナルトは相手を認めてホッとして緊張を解いた。
「ったく、何度も注意してっだろ?玄関から来てくれってば。」
諦め半分にナルトが立ち上がりながら、あれ?と思う。
さっきからカカシが何も言わない。
いつもなら声をかけて漫才みたいな言葉の掛け合いになるのに、珍しく黙っている。
(おかしいってば)
微妙な違和感にナルトがカカシを凝視する。
「……センセー?」
そこにいるのはいつものカカシの見慣れた姿だ。
顔の半分を覆面で覆われた顔。しかし唯一覗く隻眼はまっすぐ自分を見つめてはいるけれど、今まで感じたことがない冷たさを湛えている。
「……あ、センセー今日の任務、大変だったってば?」
なんとなく居た堪れなくて取り繕うようにナルトがそう聞いた。
しかしカカシは答えない。ただただナルトを見つめているだけだ。
(センセーってこんな感じだったっけ?)
普段なら感じたことのない違和感にナルトは戸惑う。
「……えーと……、あ、そ、そうだってばよ、お……お茶入れるってばね?」
急に思い出したようにナルトが台所へと踵を返した瞬間、カカシに右腕を掴まれる。
「カカシセンセー……?」
掴まれた腕からじわりと熱がこもる。
それに意識を持っていかれる。
「せん、……っ?!」
突然、腕を引っ張られてナルトの体がカカシの両腕に抱きこまれた。
軽く抱きしめられたのにナルトが反射的に見上げた。
見下ろすカカシの視線とまともにぶつかり、その隻眼に映る自分の姿が見えた。
「ちょ、ちょっと、タンマ!」
初めて他人に自分が抱きしめられている。しかもカカシに。
ナルトはハッとして顔を赤くした。
「カカシセンセー放してってば、こ、これなんの冗談だってばよ?」
恥ずかしさになんとか身を捩るのだが、カカシの腕はそんなナルトを嘲笑うかのようにびくともしない。
「センセー!!マジで、放してってば!!」
必死にナルトは訴えた。
「ねぇって!」
カカシは相変わらず、何も答えない。
いつも以上に何を考えているのか本当にわからない。
それが、怖かった。
「ナルト」
その声にナルトが身動ぎするのを止めた。
「……せん」
「……お前、俺のものになりな。」
突然、囁かれた言葉にナルトは何を言われたのかわからずに目を見開いた。
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