囚ーtorikoー | ナノ






「――…うん。」

軽く頷くとナルトは笑った。

「調子はイイってばよ。」
「そうか。」

そんなナルトをサスケは無言で見ていたが、思い出したようにビールを飲んだ。

「それならいい。」

サスケも本当はずっとあの日からナルトの事が気がかりだった。
まだ 何処か 思いつめた様な表情をしていたし…今も、きっとナルトは不器用にそれを隠している様にも見える。
だから上手い口実を作ってそれを聞いてみようかと、ダメもとでこうして食事に誘った
けれど本人が大丈夫といっているのなら…自分がそれをとやかくいう権利はない。

ただ胸にしこりがあるみたいでスッキリとはしないけれど…。

「サスケ、ほら飲めよ。」
「ん、あぁ。」

ひょいと、ナルトがビールをサスケのコップに注ぐ。
コップに注がれるビールを何気なく見ていたサスケはとある一点に釘付けになった。
(!…アレは…)
思わず、サスケは動揺した。
今までそれに気がつかなかった。
ナルトの忍服から見え隠れする白い首筋にハッキリとはわからないが、確かに一点だけ仄かな紅い痕が見える。
見るからに何かを、主張する様な。
(いや…まさか、)
ナルトに限ってありえないと自分の考えを否定する。
逆に否定すればするほど膨らんでくる。そう、でもあれは確かに…

「サスケ?」
「!」

名前を呼ばれてサスケが我に返ると、近い距離でナルトの怪訝そうな蒼い瞳にぶつかる。焦った様に思わずパッと顔を背けた。

「?サスケ、どーしたんだってば?!」
「な、んでもない…」

口元に左手をあてながらサスケは、ようやくそういった。

「なんでもないって…」

尚も言い募ろうとするナルトを手で制して、サスケは首を振った。
そばで感じるナルトの視線が痛い。
(…何やってんだ…)
その痕にひどく動揺している自分にサスケは、焦りを感じていた。
(――もしかしたら、あの痕は虫刺されの痕かもしれないのに。)
それが一番、可能性が高いと思う。
けれど、サスケはその痕をナルトに問う勇気がない。
聞いてしまえばナルトが、そして自分がその後にどういう反応を示すのか予想がつかな
(でも、もし、そうなら…)
サスケは俯いて思わず唇を噛む。
ナルトに恋人と呼べる人が出来たなら、それこそ自分はどうこういえる権利はない。

――けれど。
ナルトに特別な誰かがいる事が、とても癪だった。
反面、ナルトに想いを寄せられるその見えない相手が、とても羨ましいとも思う。
心の中でサスケは自嘲した。

「サスケ気分、悪いのか?」

心配そうに三度、尋ねてくるナルトにようやく顔を上げた。
見つめてくる蒼い瞳が揺らいでいる。サスケは無言のまま微かに笑った。

「そうだな……悪い……もう出ようか。」

サスケはそういい置いて腰を上げた。





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