囚ーtorikoー | ナノ








そくばく 0 【束縛】

(名)スル (1)しばること。捕らえること。

(2)行動に制限を加えて自由を奪うこと。





ナルトは躊躇した様にその華やかな店を眺めていた。


店内には顔に白粉(おしろい)と唇に赤い紅を塗り、長い髪を綺麗に結い上げ、色とりどりの着物を着た綺麗な女達が店を通り過ぎる男達を眺めている。

店の外でも女達が男に媚びを売りその面に妖艶に笑みを浮かべて、男を誘う。
女達が生活の為に身体を開き男に春を売る。ここはいわゆる『花街』と呼ばれている所だ。

今は黄昏が夜へと本格的に姿を変える時間帯。

花街は夜とは反対に店の電燈と女達で華やいで煌々と明るい。
この街の夜は里の昼といっていい。

「うずまき、どうした、早く来いよ。」
「あ、うん」

顔馴染みの中忍達の1人が遠くで立ちすくんでいるナルトに声をかける。
その呼びかけに躊躇いつつも、中忍達のそばに歩いて行く。

(大変なことになったってばよ)

知らずドキドキと高鳴る胸に眉を顰める。
これから女を買って、この腕に女を抱く…そのことがナルトには後ろめたい。

(…困ったってば…)

普段なら口実を見つけて断わるナルトが、こうして中忍達についてきたのにはあるきっかけがある。

事の起こりは詰め所での中忍達の会話にナルトが入ってきた事に始まる。

中忍達が話していたのは『女』と『それ関係』の事だった。
何も知らないナルトが皆があまりに楽しそうに話していたので、話をねだったのだ。

そして話が進んでいく内に話の論点がズレてナルトの経験有無に始まり、童貞はどうとかいらぬ心配をさせられて中忍達に半ば強引に花街へと連れて来られたのは、つい二時間前の事。

ナルトとて『女』に興味がないわけではない。
同じ歳頃の少年達は『初体験』を早く済ませようと、多かれ少なかれ思うものだ。

しかし、アカデミーの頃からの夢である『火影』に少しでも近づくこと、努力していくことがナルトの目標だからそれ以外には興味が薄かった。

そんなわけで嫌々ながらもついて来たのだが……来た早々、帰りたくなっていた。






site topnovellist
<<>>