囚ーtorikoー | ナノ
「…っ?」
うっすらとナルトは瞼を開いた。目覚めたばかりで霞む視界にぼんやりとする。
(…あったかい)
何かわからないけれど自分を包む暖かいものがそばに、ある。
ナルトは怠慢な動作でそれに擦り寄った。
聴こえてくるのは規則正しい心臓の音。それを聴いていると何故か安心してしまう。
うつらうつらと眠りの底へ落ちていこうとして。
「!!」
突然、思考がクリアになってナルトは目を見開いた。よく見れば目の前には大きな胸板が見える。
気がつけばカカシの腕で両肩を包まれていた。
「……」
微かな寝息をたててカカシが眠っている。
(この人、に)
意識を失う前の行為を思い出してナルトは羞恥に顔を染めた。
動かそうとしてもさんざんカカシに抱かれ続けたせいか、ひどく身体が重い。
でも……カカシに抱かれているというのに、この人肌の暖かさはなんとなく離れがたい。
そう思う自分はどうかしている。
規則正しい心臓の音を聴きながら、ナルトは自嘲した。
カカシは『男』なのに『男』の自分を抱く……
いつから、カカシが自分をそういう対象にしていたのかわからない。
ナルトはそっとカカシの寝顔を見た。
いつも顔半分を覆面で隠している、その顔を露わにしている。男の自分が見てもカカシは端正な顔立ちをしている。
カカシならば、自分でなくても相手にしてくれる女がいるはずなのに。
イルカの命を盾にとってまで、どうして自分を抱くのかわからない。
(どうして、)
答えのない問いがナルトの中で空回る。
カカシはナルトを激しく抱いた。
けれど、今はナルトを労わる様に優しく抱きしめてくれている。
(どうして……?)
カカシに抱かれるようになってから、胸に抜けない棘がある。
カカシの事を考える度にそれが鈍い痛みを伝えてくる。
何故、と疑問を自分自身に問いかけても痛みを感じるばかり。
ナルトはぎゅっと唇を噛んで、その痛みを訴える胸に手をあてた。
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