囚ーtorikoー | ナノ






汗で濡れた金糸の髪をほっそりとした指で撫でて、梳いた。

そんな仕草にもこの腕の中で気を失っているナルトは気づかない。
淡い蛍光灯の下で浮かび上がる蒼白い顔を見下ろして、カカシはため息をついた。

腕の中にこうして、ナルトがいる。

それなのに。
まだ自分がナルトを遠くで見守っていた頃と変わらない気がした。

何度も何度もこうして身体を繋げても。
まるで儚い夢の中のようでカカシは苦しげに眉間を寄せた。

「お前は」

静かにカカシはもう一度、ナルトの右手を唇に引き寄せる。
口付けてそして、そのままそれを自分の右頬に当てる。

「どうすれば、手に入る?」

……答えのない問い。
自分でもわからない、この思いの行方。

「どうすれば」

ナルトは、俺の事を、憎んでいる。
こんな行為を無理強いする俺を。

きっとそうこの先、何年もナルトは俺を許さないだろう。
…そう仕向けたのは紛れもなく自分。

自分が望んだこと。
それなのに……

「何故、」

カカシは口を噤(つぐ)み、目を伏せる。

「……んせ…」

カカシは、ナルトの言葉を聞いて目を剥く。
そう紛れもなくナルトの唇から『あの男』の、名前を聞いた。

「くっ」

額に手を当ててカカシは笑った。

「…こんな時まで、呼ぶのか。その名前を、」

カカシはまだ起きる事のない、ナルトのその細い首を片手で軽く絞める。
ほんの少しでも、その指先に力を込めたならばきっとすぐにへし折る事が出来るだろう。



このまま。
ナルトを永遠にするなら。



「それでもお前を放さないよ。」

カカシは薄く嘲笑う。
絞めた指先を広げて、その首を撫でる。

いつの間にか自分の中に生まれたナルトへの、狂気めいた独占欲。



例え、誰であろうと。

この想いが偽りの、感情だとしても。



「放してやらない。」

カカシは笑った。



お前を放さない。

逃がさない。



「逃がさない」




この思いの、果てのない牢獄から。


fin.





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