囚ーtorikoー | ナノ
初めてナルトと知り合ってから7班を経て、もう5年は経つ。
ライバルだとナルトに一方的にライバル視され、それにつられる様にサスケも嫌が上にもナルトを見なければならなかった。
それがサスケの心の中の彼への見方が微妙に違ってきたのは、何時からだろう?
ナルトの事を考えると、いつも暖かくなり、そして辛くなる。
それが何という感情なのかその時はわからなかったけれど、今はその答えを知ってる。
それは、口が裂けてもナルトにはいえない感情。
初めてそれに気づいた時、男に対して抱く感情ではないとその時は否定した。
……けれど。足掻いても足掻いても、こうしてナルトに恋焦がれる自分がいる。
離れられない自分も。
「…くそっ」
脳裏に浮かぶナルトの姿にサスケは睫毛を伏せた。
「!!」
その時、サスケはある気配に反射的に身構える。
「…やぁ、サスケ。」
のんびりとかけられた声にサスケは目を見開いて眉間を寄せた。
(…カカシ)
サスケの前にカカシがいた。相変わらず飄々とした雰囲気の元担任。
(どうしてコイツが)
朝早いこのアカデミーにいる?サスケはそう思った。
「そんな睨むなよ。久しぶりの涙のご対面なのにサ。」
「……アンタ、」
「なんでココにいるのってこと?」
睨みつけるサスケに茶化すようにそういって、カカシが笑う。
「朝早く起こされたんだヨ。火影様の命でお前らを捜せってネ」
「……」
「全く困ったもんだヨ。もうお前らの担任じゃないのにネ。」
カカシは少し屈んでサスケの耳元でそう囁く。
「ナルトは?」
「もう担任じゃねーんだろ。……いう必要はないな。」
「へぇ、せっかくココまで呼びに来たっていうのにそれはないんじゃない?サスケ」
お互いの真意を探りあう様にカカシとサスケの視線が絡み合い、束の間の沈黙が2人の間に漂う。
「お前は任務に行かないの?」
静かにその沈黙を破ったのはカカシだった。サスケは訝しげにカカシを睨み返した。
(!)
カカシの目に冷たい光が浮かんでいる。ぞくり、とサスケの背中に寒気が走る。
「任務は大切でショ?お前まで行かないつもり?」
有無をいわさないその言葉にサスケは緊張を隠せない。
「任務は絶対なんだよ。それはお前もわかってるよね?守れなければ忍失格。悪い事はいわない、任務に行きなさい。」
サスケはきつく唇を噛みしめた。
いくら気に喰わない奴でも、上下関係は絶対だ。
上忍に正論をいわれればそれに従わなければいけない。
「わかった」
「いい子だね、サスケ」
カカシが笑ってそういうと、サスケの頭を撫でた。サスケは反射的にその手を振り払い睨みつける。そして。
「……アイツは、」
ナルトの事をカカシに頼むのは、はっきりいって癪だがそれでもナルトを放ってはおけない。
「アイツは医務室で寝てる。体調が悪そうだった、から」
「あぁ、わかった。」
カカシがサスケの言葉を最後まで聞かず、そのそばを通り過ぎて行く。
「お前は早く行きなさいね」
サスケがカカシを振り返ろうとして、そこには既に跡形もなくカカシの姿が消えていたのに呆然とした。
カカシが七班の担任になってから。
サスケはカカシの事が気に入らなかった。
片目とはいえ、うちは一族しか遺伝しない車輪眼を持ち、意味もなくナルトに近づいては親しそうに話す。それが癪で気に入らない。
イルカとは別の意味で、カカシをサスケは敵視していた。
それでも。
それでも今のナルトの状態を見てやれるのは他にはいない。
「くそっ」
小さく舌打ちしてサスケは後ろ髪をひかれる様にその場を後にした。
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