囚ーtorikoー | ナノ
足元に倒れているナルトをカカシはじっと見下ろしていた。
窓から届く月灯りに浮かび上がる身体。
その淡い光が乱れたナルトの金色の髪を輝かせる。
暫らく腰を下ろすとカカシは両手を伸ばし、床に倒れているナルトを抱き上げ3年前よりもずっと大人に近づいてきたその身体を抱きしめる。
……どんなに。
どんなにお前を欲していたか、わかる?
途方もなく長い時間の中で、お前だけを見ていた。
……ずっと。
けれど、ずっとお前のそばにいられるわけじゃない。
お前が中忍になるということは、お前と離れ離れになるということ。
俺とお前は教師と生徒ではいられなくなるということ。
部下でも上司でもなくなるということ。
その笑顔も、その蒼い双眸も、何もかも俺の手から離れていく。
そして、俺を置いて遠く離れていくんだ。
いつかきっと……
微かな寝息と暖かな肌のぬくもりに、不意に胸に刺さった小さな棘が疼く。
カカシはその疼きを堪えるようにそっと目を伏せた。そして。
「ナルト」
目を開きカカシは意識を失っているナルトに囁く。
「お前に『背徳』を教えてやるよ。」
ゆっくりとナルトの左腕を引き寄せてその手に口づける。
それがお前にとって哀しいことであっても。
それがお前の……俺に対して敬う瞳じゃなく、
俺を憎む瞳、でも。
それでも、いい。
お前に想われるのなら、
俺は、鬼になろう。
「囚われるという事の『背徳』を」
fin,
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