恋に上下の隔てなし | ナノ



Hyperion

オーバーヒート

※ノボリと恋人 ちょっと表現注意









シングルトレインでのバトルを終え、車内から人が行き交うホームへ移るときのことだった。
先程まで会話をしていた相手であるノボリがすれ違いざま、あくまで自然を装い顔を寄せ、呟いた。その内容に驚いたリオは目を丸くし、それから顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。その様子にノボリは小さく笑い、しかしすぐに執務室へと歩き出す。リオは赤い顔のまま何かを言おうと口を開いたものの、周りに沢山人がいるため言葉を飲み込んだ。その代わりに前を歩くノボリに走り寄り、隣を歩きながらノボリの脇腹を小突いた。

「ノボリさんのバカ。変態。発情期」

未だ顔を赤く染め、小突きながら小声で悪態をつくリオとは正反対にノボリは涼しい顔をしていた。背筋をぴんと伸ばし、前を向き歩く。時折視線はそのままにリオの頭を軽く撫でるのが、リオにとって悔しく、また恥ずかしいのだ。

「顔真っ赤ですよ」
「誰のせいだと思ってるんですか…」

執務室のドアを閉めたところで、ノボリはようやっと口を開いた。冷めない熱を逃がすように顔を手で扇ぐリオを面白そうに見ながら、ノボリは二人分のコーヒーを紙コップに入れて机へ置き、椅子へ座った。

「座らないのですか?」
「…………」

この場合維持でも座りたくなかったのだが、ノボリの煎れたコーヒーの誘惑に負け、ノボリの隣へ腰かけた。かくも儚きかな我がプライド。自嘲しながらもコップに口をつけると、飲み慣れたほろ苦い黒い液体が口内に広がった。
すっと前に差し出された箱を見ると、美味しそうに焼けたクッキーが並べられている。箱を持つ手を遡ると、困ったように小さく笑うノボリの顔。

「機嫌を、直してくださいまし」

答える代わりにクッキーをつまみ上げ、口へ放り込む。さくさくとしたクッキー生地が砕け、先程は真逆な甘さがコーヒーの苦味に溶けていった。クッキーとコーヒーと一緒に、もやもやした感情も飲み下す。

「……優しくしてくれたらいいです」

ぷいと顔を背けながら、しかし顔を朱に染めて言うものだからノボリは切れそうになる理性の緒をしっかりと掴みながら、リオの髪に優しく触れた。それから顔を寄せ、おでこに軽く唇を触れると、リオも応えるようにノボリのシャツを掴んだ。それがまたノボリを煽り、今度は顔を下ろして唇同士をくっつける。

「ちょ…ノボリさん仕事中でしょう」
「…………」

何も言わず、いつも通り口をへの字にしながらリオのおでこ、頬、首筋にキスを落とす。口へしてこないのが最後の理性なのだろう。それ以上は求めてこなかった。ちゅ、と音を立てて顔を離すと、ノボリは思いきりリオを抱き締めた。

「昨日あんだけ人のこと好きにしておいて、まだ欲求不満なんですか」
「…それに関しては返す言葉もございません」
「思春期の中高生ですか」
「男の性でございます」
「正当化せんでください恥ずかしい」
「リオが可愛いのが悪いのです」
「人のせいにす…やっ」

ああ言えばこう言う、と言った感じに言葉のキャッチボールをしていたが、突然ノボリが服の上からリオの身体を触り始めた。布越しとは言え探るように、リオの感じそうなところを上手く緩急をつくて触れられ、気を抜くと溢れそうな甘い声を出すまいと必死で口を閉ざす。

「…リオ」
「ノボリさッ…んッ」

そんな熱っぽい目で見ないでください頼むから服に手ぇ突っ込まないでください。頭の中でぐるぐる回る思考がショートしそうだった。
先程承諾の言葉を零したものの、今この場でとは言っていない。執務室はクダリとも兼用だし、職員が訪ねてきてもおかしくない場所。このままノボリのペースに流されてはとんでもないことになってしまう。必死でノボリの肩を押し返すも、男と女の力の差は歴然だった。
ああああもう、これどうなっても知りませんよノボリさん。ノボリさんがこんな肉食系だなんて知らなかった。むしろ知りたくなかった。
首元にかかるノボリの息がいやに熱くて、触られた場所からじわりと広がる熱が少し気持ち悪い。それにしても、あつい。

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続きます
(110404)



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