ピーンポーン
僕は圭くんに言われた通り,チョコ作りが始まる前に
向かいのあっくんと琳くんの部屋を訪ねた.
チャイムを押してもしばらく反応がなかったから
試しにドアに手を掛けると,すんなりとドアが開いた.
僕が来るって分かってたから開けてくれてたのかな?
とりあえず玄関に入って,2人の名前を呼ぼうとすると…
「ケーキなんか作れるわけないだろ」
「ンなのやってみないと分かんないじゃん〜」
「分かるよ. 失敗したら時間の無駄になるし」
「大丈夫〜. 食べれるものにはなるって〜」
「クッキーくらいでいいだろ.
それなら失敗する可能性はかなり低い」
「オレはケーキがいいんだって〜!」
2人の言い争う声がリビングから聞こえた.
もう自分の部屋に戻るべき…? って考えが過ぎったけど
よくよく2人の話を聞いてみると,
なにやら "ケーキ" と "クッキー" で対立してるみたい.
それなら何とかなりそう,ってリビングに足を踏み入れると
「瑠依ちゃん!」
真っ先に気づいたあっくんが,すぐにケンカを切り上げて
僕に抱き着こうとした.
「待て,金髪! 話はまだ終わってない」
でも後ろから琳くんに首根っこを掴まれて
グェッと声を漏らして,僕から遠ざけられた.
「ねぇ,ケーキとかクッキーとか,何の話してたの?」
丁度ケンカが中断したからこのチャンスを
逃しちゃダメだ,と僕は2人の間に割って入った.
「せっかく今日は瑠依がこっちに来るし」
「明日はバレンタインだから,何か作ろうってなってさ〜」
ふむふむ. それでどっちを作るか意見が割れたんだね.