パラリ

数分置いて

パラリ

変わらない間隔
止まらない指先

私は本を読む木手を観察していた
まぁ、理由は暇だからという至極簡単な事

……本当は、それ以外にも理由はあったりするのだけど

頭から
セットが大変そうな髪型
鋭い瞳、睫毛も随分長い
スッと通った鼻筋
厚みのある唇
体も
無駄につきすぎていない筋肉
鍛えているのに細めな体
指が細くて綺麗だなぁ、と思った辺りで溜め息をつかれた

「名字クン、君は何がしたいんですか……」
「え?」

しおりを挟んで本を閉じる、几帳面だな

「まだ見て居ますね」
「あぁ、観察してた」
「どうして?」

眉間に皺を寄せて、木手は私に問い掛ける
嫌そうな顔してるのに、凄く整っているのは変わらない

「……暇だから?」
「疑問で聞かないでよ……俺が聞いてるんでしょ」

ふぅ、と小さく溜め息をついて
木手は真っ直ぐに此方を見つめる

睨んでは、いない

「な、なに?」
「観察、でしょ?」

ニヤリと笑った木手は、驚く程に綺麗だった

「いや、だって、私を観察しても」
「面白いよ」

カタン

椅子の音が、やけに大きく聞こえた気がした

木手の細い指が、私の頬をすべって

「……ぷっ」

木手は、笑った

「名字クン、硬くなり過ぎ」
「なっ……!」

口許に手を当てて、クスクスと笑う
そんな木手を、私は睨む

「だから、名字クンの観察は面白いのよ」

どうしても様になる木手に悔しさを覚えてしまって
でも、その悔しさは別に彼を越えたいとかいう訳でも無くて

「じゃあ、俺はそろそろ帰るからね」
「う、うん」

鞄に本をしまって、木手は口角を上げた

「観察、いつでも御自由にどうぞ?」
「もっ、もういい!」
「そう? 残念」

クスクスと笑いながら、木手は私を残して教室を出る

アイツには敵わない

一人になった教室で、私は思った
まぁ、いつかは勝てたら嬉しいんだけど

ふと外を見ると、木手が歩いているのが見えた
木手の歩くのが早いのか、私がぼんやりし過ぎていたのか

いつでも御自由に、と言った彼の言葉を思い出して
窓から木手を見ていると、彼は此方をチラッと振り返った

私がいると思っていなかったのかもしれない
驚いて、少し立ち止まり
口角を上げて、直ぐに前を向いて歩き出す


あぁ、私は彼の観察をやめられそうにない

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