出会いの見本



20…30……


アンインストール開始。


「え!?なんで」


リンが慌てる。
俺も慌てた。なぜ
消されなければならないのか…
そう 思って また驚く。


「リン…俺達感情がある…」


「え?…ぁ…本当…だ…」


なんで?
リンはまた慌てだして、少しもしない内に俺の手を突かんで走り出した。


「リン?」


「感情があるんなら、私たち生きてるんだよっ!私こんな所でじっとしてるのは嫌!!」


「うん…そうだな」


走った。
前なのか後ろなのか、上なのか下なのか分からない中、2人は無我夢中で逃げた。


必死だった。


しばらくして、何処からか聞こえてくる無機質な声。


排除して終了しますーー…


「排除!?」


「リン、あれ!」


目の前に広がっていく光の粒。そこにたどり着く頃には、人一人分入れるぐらいの大きさになっていた。


「よしっ飛び込むよ!」


俺の手を離した。


「リン!?走って飛び込むのか?危ないって…」


彼女は俺の話に耳を傾けずに、両手をつきだした。


「おりゃぁぁぁぁ!」


「ちょっとま……っ!」


勢いよく手はその光に入っていった、が、つっかえたのか肘あたりで止まってしまった。


しーんと静まり返る俺達。
もしかして、これが出口で合っていたとして、リンがつっかえてしまったために出られなくなった。


とかではない…よな?
どうしよう…


《いゃぁぁぁぁぁ!ほっホラー!!》


外から声がした。
誰だろう…綺麗な声だなぁ
だいぶ涙声だけど。


「いゃー!抜けなくなっちゃったーっ」


あっそうだった、まだまだ問題は解決していない。


「だからいきなり走るなって言っただろ!」


「だって光が見えたんだもんっ」


「威張るな!どうすんだよ…この状況」


《この手…リン…?》


ぴくんとリンの体がふるえた。つつかれたらしい。


「え?あなた…もしかしてもしかしてっマスターっ!?」


その後に床を引きずる音。
腰が抜けているようだ。
パソコンから腕がはえている光景を想像して、ぞっとする。
怖すぎるだろう…


《えっと…はい…私マスターです…》


「ちょっと聞いた?マスターいるよレン!」


「えぇっとー…とりあえず初めましてマスター。レンです。その腕はリンです」


「リンでーす!お姉ちゃんでーす」


何でこんなに、陽気にいられるんだ。
さっきまでの姉は一体どこに…
ため息をこらえつつ、


「会って早々にすみませんが、その腕引っ張ってやってくださいませんか?」


《はっはい!》


「ひっぱってー」


《動かないでね…》


すると、勢いよくリンが光に飲まれた。
俺も慌てて外にでる。


なんだ…案外簡単に出れた…


足元を見るとリンが女の子を押し倒していた。


「おいリン!マスター下敷きになってる!」


「え?わっわっごめんなさいマスター!!」


「あ…レン…も…出れてよか……」


そう言って、パタリと動かなくなった。


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


死んだ!?


二人の頭の中に三文字が浮かび、そして、すぐに打ち消した。


「気絶しただけ…だよ」


泣き出しそうになっていたリンに、着替えさせるように言ってから部屋を出た。


あの人が、俺たちのマスター。
真っ先に心配してくれた女の子。


さぁこれからどうなるか…
不安の固まりみたいだった空間から、やっと抜け出せたんだ。


「どうぞよろしくね…マスター」


とりあえず、気に入ってもらうために朝ご飯でも作るか。

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