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扉を開けたら不思議な世界云々と言うのもなかなかに信じられないことで実際にそんなことはないだろうと思うが、扉を開けなくてもうっすら微妙にと言うのか絶妙に隙間から中が見えて、且つその中で自分の親友がとんでもない変態染みた行為を行っている時点で、フレンはちょっと本気でなんだこの状況、と途方に暮れるどころか腹を掻っ捌いて死にたくなった。が、まあぴくりとも身動きが出来なくてなんだか本当にどうしようもない状態ではあった。
呆然として立ち尽くした扉の先でなぜかユーリが本当になんでかルーク様を壁際に追いつめてキスをしている。真っ赤な顔をして息苦しそうにしているルーク様もそのゼロ距離で烈破掌をぶちかましてしまえばいいと思いつつも、抵抗ができないのはそうかユーリが無理に迫っているせいだろうかそういうことだろうか。…知らんがな。
ちょっと本当にここは何の異世界だと嘆きたくて仕方がなかったが現実として目の前でユーリはこともあろうかライマの王位継承者たるルーク様に迫っているし、そもそも君たちは男同士だろう!と叫びたくなった僕は悪くないと思った。耳まで赤くしたルーク様の目尻にキスをしてユーリが少しだけ顔を離す。今すぐ顔だけじゃなく体ごと離れてくれたらユーリの介錯を僕はきちんと果たしてみせようと動けたのに如何せんあんまりにもルーク様との距離が近かった。離れてくれないかユーリ。それ以上接近しているとルーク様が穢れてしまうだろう。


「ほんっとお前マジありえねぇー!!こんなとこで何考えてんだよ!!」
「何って言われてもなあ…まああんまりにもお前が可愛いから我慢できなくなったと言いますか」
「……嘘くせぇこと平気で言ってんじゃねーよ、変態」
「その変態に結構ノリノリで付き合ってくれる癖に」
「誰がそんな…っ!!」
「したいって言ったら、どうする?ルーク」
「−−−っ!!」


耳元で囁くにしてもとんでもなくセクハラ以外の何物でもないだろう、ユーリ。
と思わずそんなことを思ってしまった僕は悪くないと思ったし、と言うか一体何なんだろうかこの雰囲気はと最早途方に暮れるぐらいしかリアクションの持ち合わせがないようにも思えて仕方なかった。もしかしなくとも僕は今とんでもないところに居合わせているんじゃないのかそーかそういうことなのか。
いや、でもしかし本当にちょっと待って欲しい。恋愛は自由だと言うがそもそも君ら性別は同じだろうしなんでルーク様も本気で抵抗しないかと言えば僕がこんなところに居合わせる前からそういう関係を持っていたからであって…え?ちょっと待ってくださいルーク様。ナタリア様は?ナタリア様は婚約者ですよね、ルーク様の。
当のナタリア様もアッシュ様と睦まじくしていらっしゃいますがいくらなんでもユーリとルーク様ほどでは…違う。話が逸れてるぞ僕。そもそもユーリとルーク様は同性同士だ。そんな恋愛は普通あり得るのか。いや、僕も一応そういう人達が居ることも知ってはいるけれど、ユーリなんかに捕まっては王家の血が途絶え…じゃなくてルーク様はやんごとなきお方なのに何をしてるんだユーリ、君って人は!


「………誰か来たらどうするつもりなんだよ」
「んな野暮なことする奴なんて、居ないって。と言うかこの時間なら誰も来ないだろうし。ダメか?ルーク」
「耳元でっ、喋んなバカ……っ!」


誰も来ないどころか今まさに僕が扉を挟んで立っていると言うのに、そのどこから出てくるのかわけの分からない自信満々な口振りに、本気で親友をぶん殴ってやりたいと思ったのは久しく忘れていた感覚だとは思った。顔を真っ赤にして羞恥に耐えているルーク様が本格的に危ないし耳元で喋ったせいかその翡翠色の瞳には涙さえも浮かんでいる。このままではユーリが益々犯罪者として磨きが掛かってしまうと思ったら流石にこのまま傍観者で居ることは僕にはいろんな意味で耐え切れないことで、思わず中へ踏み入ろうと扉に手を掛けた。その時だった。


「なぁ、ルーク。今日は一回、口でしてみてくれねぇか?」


『今日は』って一体どういうことなんだい君は。
僕は今ほどライマの法律を学んでいないことを後悔したことはかつてない心境なのだけど。


「なっ、なに言ってんだよバカ!!誰がそんな真似…っ」
「イヤか?ルーク」
「……っ!!」
「どうする?」


耳元に唇を寄せてルーク様に語りかけるユーリのその行動が何かしらの必殺技だとでも言うのだろうかと仕様もないことを考えながらとりあえず僕は強制猥褻ぐらいで連行しようと思ったのだ、が。


「…上手くできなくても……ユーリが良いって言うなら、してやっても、いい」


あんまりなまさかのルークの返答にガ━━(;゚Д゚)━━ン!!とフレンが思ったかどうかはさておき。それに近いだけの心境になったのはまず間違いなかったのだが、そんな状況に全く着いて行けないまま呆然としているその前でユーリがルークの手を引き、予備として保管されているソファに座ったのだからちょっと本気で廃棄処分しておくべきだったとフレンは思った。ソファに腰掛けたユーリは足の間にルーク様を座り込ませ、冗談ではなく本当に男性器…いや、もう汚物でいいだろう。王族に何てものを突き付けているんだユーリ!!と叫びたくても叫べないのは僕の心が弱いからだろうかまともな判断が出来そうになかったが、頼むから恥ずかしがりながらユーリの性器を手でおずおずと触れるのはやめてくださいルーク様と何十回も頭の中で土下座しながら懇願してしまった。やめろルーク様の顔に汚物が触れる。上下に擦られれば形状が変わるのは男としてもしかしたら仕方ない反応だとしても、王族相手に晒していいものではないし、気合で勃たせるなユーリ。びくびくしながらそれでも舌を這わせようとしないでもいいんですルーク様。根元を舐めさせるなユーリ。止めろよルーク様の鼻や頬が汚染されるだろう!!何をさせてるんだ君って奴は!!!!





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