ちぐはぐユートピア・前



グラニデと言う世界からカノンノ・イアハートと名乗る少女が訪れた時も部下であるアスベルと揃ってフレンはなかなかに現実を直視できないと言う石頭っぷりを発揮していたのだが、そのグラニデから今度はそちらのルークが訪れた時には、現実を直視できないと言うよりも現実を直視したくないと言う考えが浮かんでしまい、自分自身の脆弱な精神に日に日に溜め息を吐く回数は増えていくばかりだった。今さら異世界云々を信じないとは口が裂けても言わないどころかそんなことはもう自分だけではなくアスベルだって言えないのだが、それにしても…と複雑な気持ちはどうしても拭えやしない。
端的に言うのであれば、要はグラニデのルークが訪れたことによって、ルミナシアのルークに対する陰口をよく耳にすることになった、と言うことだった。ライマ国の王位継承者であるルーク様は確かに普段の態度は横暴に振る舞うことが多々とありグラニデのルーク様と比べるとその差は明らかなのだが、けれどそれだけじゃないことを知っている身としては気分よく過ごせるものではない。
誰、とまでは言わないが、酷いと「こっちのルークもあっちのルークみたいだったらアッシュの負担も減って良かったのにね」なんて言葉までバンエルティア号の中で囁かれていたりして、その度にフレンは眉間に皺を寄せてしまい、何も言えずにその場を離れることがほとんどだった。アッシュ様にはアッシュ様の、グラニデのルーク様にはルーク様の、そしてルミナシアのルーク様にはルーク様の良いところがそれぞれあると言うのに、どうして理解してもらえないのだろう、と言うのはもう最近ではずっと答えの出ない考え事と化している。今日も今日とてそんな考え事をしなければならない言葉を耳にして、フレンは掃除当番だからと体良く席を外してデッキブラシやらモップやら掃除道具一式を片手に倉庫へと足を運んだのだが、まさかそこで今までの悩みが些細なことだと思うような問題に直面するとは、夢にも思っていませんでした。



「ちょっ…バカ!!いい加減にしろよ…っ!誰か来たらどうすっ」
「平気だって。こんなところ滅多に人なんて来ないんだから、お前はちょっと黙ってろ」
「ふざけ…っ、んん!!」


気が付いたらいつの間にか親友が変態になっていたようです。
上の階で鬼ごっこをしているらしいマオ達がここへ来ないことをひたすら祈るような、そんなある日の昼下がりのことでした。






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