ジギタリスに口寄せた、 中・V




何が一番恐ろしいかと言えば、心配し過ぎて嫉妬も後悔もごちゃまぜに、唯一人をひたすら求めている男のことだとは流石にグラニデのルークにだって分かることだった。
あれから目を覚ましたかと思えばすぐにまたフレンと刃傷沙汰を起こそうとして(しかし喧嘩両成敗だとレイディアント・ハウル)傍観者であることを決め込もうとしたレイヴンを壁に叩き付け(無残な姿になりつつある船にチャットが泣いた)そうして日が昇った時にはひたすら無言を貫き通して牙狼撃の練習をしているのだから、これにはグラニデのルークもアンジュと揃って顔を引き攣らせることしか出来そうになかった。
正直に言って物騒過ぎて怖い。ユーリさん誰彼構わず殺しそうで心超狭い。
あの様子では戻って来た時にゼロスに叩き込んで戦闘不能にする気なんだな、とは分かりきった話だったが、だからと言って止めるには岩斬滅砕陣、穿衝破、岩斬滅砕陣、穿衝破、烈震天衝→レイディアント・ハウルをお見舞いしてやったと言うにも関わらず、瞬時に蘇った時点で諦めるしかなかったのだ。リバースドールを持っているわけでもリヴァイブが掛かっているわけでもないと言うのに、瞬時に立ち直るのはなんだかいろいろと限界を突破しているからなのだろう。結局朝まで帰って来なかったとぶつぶつ言っているのはガイだったが、口を開かない分、ユーリもとっくにギリギリだと言うのは容易に分かることだった。
ああ、言っておくけどいつ岩斬滅砕陣を使えるようになったんだとか言うツッコミは受け付けないので、悪しからず。




「みんな!!ゼロスが帰って来たよ!ルークも一緒!!」



主に一晩貫徹で待機していた組が放つとんでもなく険悪で異質な雰囲気のホール内に、わざわざ甲板に出て様子を見ていてくれたカノンノがそう叫んだのは、そろそろ7時に差し掛かるようなそんな時間のことだった。
一応もう朝食の準備は出来ていますよ、とどうにか場の雰囲気を和らげようとしたロックスが、結局涙目になるばかりで言えなかったそんな時でもあったのだが、それよりも確かに見えた、赤毛2人。
問答無用に秘奥技が連発されることはまずなかったのだが…その理由がゼロスの背後にルークが隠れてしまっていると言うことなのだから、心配そうに視線を向けるクレスやロイドと対照的に凍り付いたガイの姿には、もうなんというか苦く笑うしかなかった。


見えた朱色に、なによりもまず心底安心したようにほっと息を吐いたユーリのこれからの反応が怖いのだが、こうなったらなるようにしかならないのだろう。


さて、一体どうなることか。






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