結果から言えば、伊達工業は烏野高校との試合で敗れ彼らの夏は終わった。

格好良い所を見せるなんて意気込んだ割に、散々な結果だ。そしてそれよりも、3年生の引退という現実は予想を遥かに超えて重くのしかかり唇を噛み締める。

試合が終わった後、ミーティングの為学校に戻るバスへと向かう道すがら。試合前に会った人物を探す二口だが、彼女の姿は何処にもなかった。





「てことで黒沢センパイに会いに来たんですけど。」

「お前のメンタルってマジどうなってんの?」

「なんで鎌先さんしか居ないんスか。」





お昼休みなら居ると思ったのに。そう白けた顔の二口が鎌先を見れば、失礼だろ!と鎌先が目を吊り上げる。

少し話がしたいと思った。気を遣われることはまあ間違いないだろうが、敗けて話しづらくなって疎遠になるなんてことを避ける為だ。もちろんそれで避けられていたとしても二口に引き下がる気は微塵もなかったが。

目的の人物が居ないとなればもうここに用事はない。そう言わんばかりに二口が教室を出ようとすると、廊下の窓から見えた莉子の姿に全身をそちらに向けた。





「………」

「あ?どうした?……黒沢あんなとこに居たのか。」

「イケメン気取りも一緒か」

「お前もな。」

「俺はただのイケメンなんで。じゃあ行ってきます。」

「もう来んな!」





ふっと小馬鹿にしたような笑いの二口がくるりと踵を返す。その背中に怒鳴った鎌先だが、彼の姿が小さくなるとまた視線を窓の外に戻した。

格段に話すことが減ってしまった今。なにやらクラスの男子の間でも話題になっている。莉子と話していると大体の確率で長谷部が割り込んでくることだ。自分だけではないかと思っていた鎌先だったが、周りも同じだったようで一安心したのは最近のこと。

それでも割とよく話す仲だっただけに、少しだけ寂しさを感じているのもまた事実。どうにかまた、前のように話せたら。鎌先は長谷部と莉子が離れていく様を見ながらそう考えた。

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