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『見て見て』
「?…夜久と西谷くん?」
『ミニマムズ。…った!!』
春高第一次予選を控えたある日の午後。午前練習が終わって昼食を取った後の休憩中、道香がスマホを画面を海に向けた途端彼女の額に夜久のデコピンが決まった。
それを横目で見ながら寝転がって天井を仰ぐ黒尾と、壁にもたれてゲームに没頭する孤爪。体育館には今、この5人しかいない。
『マジ指の力どうなってんの?クルミ指で潰せんじゃない?』
「鍛えたら道香の頭もいけそうだよな。軽そうだし」
『はー?ねえ海今聞いた?ひどくない?』
「どっちもどっちだと思うけど。まあ道香も女の子だからな、もう少し手加減してあげてもいいんじゃない?」
『海……!素敵!』
「海が甘やかすから付け上がるんだよ。」
緩いそんな会話が続く。午前練習で消耗した体力の回復に努めているのかなんなのか、黒尾は特に興味を示すでもなく目を瞑った。
ひゅうっと、体育館に風が吹き込む。
少々生ぬるい風だが、電気を消し暗くなった体育館には丁度良く溶け込む温度だ。満腹と入口や窓から差し込む光が眠気を刺激する。
『黒尾?…寝た?』
「起きてマース」
「後何分だ?」
「結構あるよ。30分くらい」
『なんか黒尾見てたら眠くなってきた。』
「昼寝でもするか。」
「たまにはいいな。」
『研磨は?』
「…いい」
夜久と海に続いて道香も寝転がる。ひんやりした床が火照った体を冷ますようで、座っていた時よりも眠気が強くなる。
隣にいる黒尾が眠る体勢に入るのも無理はない。三人揃ってそう思いながら、降りてくる瞼を逆らうことなく閉じた。
騒がしい後輩達がコンビニから戻ってくるまで、あと20分。
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