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『あーお腹いっぱい。』

「お茶っス。」

『ごめんありがとう』





ガヤガヤと騒がしい食堂内。その一角に、昼食を終えた道香の西谷、それから東峰が座っていた。

先程から山本が遠くでこちら(正確には西谷と東峰)を威嚇しているが、道香が笑顔でひらりと手を振れば毒気が抜けたようにヘナヘナと座り込んで。





「明日で最後っスね。もっと道香さんと仲良くなりたかったっス。」

「西谷は積極的だなあ…」

『まだ機会はあるでしょ?また合宿あるしね。』

「でもそれって俺らが春高予選勝ち残らないと」

『「残ります。」』

「う、うん、」





ネガティブな発言をしかけた東峰に、西谷と道香が声を揃えて言い放つ。その勢いと自信はすごいもので、東峰がたじろいだ。

道香が薄く笑ってお茶を一口啜る。口ではこう言っても、実際確実に行けると決まっているわけではない。

しかしながら今回の合宿は彼ら烏野が加わることで刺激になり、全員の士気を上げているようにも感じた為IH予選より強くなっている実感はある。





『確かにまあ最後って考えちゃう気持ちもわかるけどね。旭君ほどネガティブにはなんないけど。』

「すごいなほんと…。俺悪い方向にばっか考えちゃうから。」

「旭さんはもうちょっと自信持って!絶対上手くなってるんスから!」

「チームメイトがこうワイルドだとね。」

『うちの衛輔君も似たようなとこあるわ〜』





俺がついてます!そう得意げに笑う西谷が、夜久とかぶって見えた為道香がそう溢すと。通りがかったらしい夜久もなんだと話に入ってきて、スッと道香の隣に座る。





「旭くんのジャンプサーブヤバかったもんな」

『ヤバイヤバイ。GWにはそんなのやってなかったのにビビった。』

「ほら旭さん!道香さんと衛輔くんがこんなに褒めてくれてるんスよ?ウチのエースを!」

「おお、おい西谷あんまり言わないで恥ずかしい!」

『スパイクの時めっちゃカッコイイよ旭君!』

「あのパワーは唯一無二!」

「ちょ、ちょっと!」





褒められ慣れていないらしく。西谷の無意識の煽てで照れを見せた東峰に、それを見逃さず便乗した道香と夜久がわざと褒めると。

烏野ではあまりされないやりとりらしく、顔を真っ赤にした東峰が顔を覆ってひたすらに止めようとしている。何故照れているのかわからないと首を傾げる西谷も含めてそれが面白く、道香と夜久はしばらく2人を見ながら笑った。





『午後もパワーサーブ期待してるよ』

「桜井さんっ」

「俺レシーブ出来るかな。旭くんのだけは取れないかもな。」

「エッ!衛輔くんが取れないサーブ打てるなんて旭さんマジすげえ!」

「お願いだからやめてくれ…!」

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