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「アザス道香さん!」

「道香、こっち手伝って欲しいんだけどいい?」

「桜井さーん、テーピングして欲しいだけど…今大丈夫?」





烏野での朝食が終わってからというもの。何故か道香の手隙を狙った彼らの誘いが集中し、黒尾の額に青筋が浮かんでいた。

彼らとは。言うまでもなく西谷、清水、菅原の3人だ。





「なんなの?嫌がらせなの?」

「さあなー。」

「まあ仲良くなってるのはいいことだろ?」

「俺も道香さんとられたみたいで寂しいっス!」





体育館の隅で清水と共にタオルやシャツを回収する道香に、テープを持って駆け寄る菅原とそれに続く西谷。道香がテープを受け取って菅原にテーピングをし始めると、黒尾は一気に禍々しいオーラを出しながら上がったトスを相手コートに打ち下ろしていた。

これでプレーがぶれる事はなくむしろ気迫のある黒尾になっている為、結果オーライな気もするが。





「…クロが心配するようなこと無いと思うけど。」

「…マジで?リベロも居るんだぞ?」

「そう思うならさっさと告白すれば。」





タイムアウトでコート外にはけながら、横目で黒尾を見ていた孤爪がボソッと呟く。彼の目から見てそうなら、きっと単純に仲良くなりたい感情なのだろう。

しかしそれでも黒尾にしてみれば気が気ではない状況であることには変わりなく、孤爪の一言が胸に突き刺さった。





「なんか最初と逆ですね!」

「確かに。道香から烏野マネにガツガツ行ってたもんな。」

「心開いたんじゃないですか?道香さんそういうの上手いし。」

「あるわー。」





犬岡や芝山、夜久の会話を盗み聞きしつつ、相変わらず烏野メンツに囲まれている道香を見る黒尾。代わる代わるやってくる彼らになんの疑問も持たず業務と並行しながら相手をしていて。彼らも道香の負担にならない程度にやっているようで、黒尾が割って入る隙もない。

どうなっているんだと澤村を睨みつければ、道香の隣に居た彼が顔を上げてニヤッと笑った。





「黒尾〜〜あれいいの?道香取られちゃってるよ?」

「人気者だからなあ道香はー!」

「皆まで言わないで、白福サン雀田サン。」

「意外とあのキャプテンくんかもよ?」

「ありえる〜〜。掻っ攫ってっちゃう感じ!」

「マジで本当にヤメテ。」

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